衆院選(15日公示―27日投開票)で立憲民主党がめざす野党候補のすみ分けが進んでいない。目標とする事実上の与野党一騎打ちの構図は全289小選挙区のうち2割弱にとどまる。立民、日本維新の会、その他の野党が競合する「野党乱立」は81にのぼる。調整の成否は野党の伸長を左右する。

立民、維新、共産、国民民主、れいわ、社民の野党6党が擁立を発表した候補予定者を集計した。前回集計した2023年末と9日時点を比較し、協力の進み具合を調べた。自民党派閥の政治資金問題を受けて公認が得られず無所属で出馬する候補は与党側として数えた。

立民の野田佳彦代表は維新、共産、国民民主に候補者調整を呼びかけているものの、進展は乏しい。21年衆院選で140ほどあった一騎打ちは現時点で55にすぎない。野党乱立の選挙区は23年末から倍以上になった。維新が擁立しない場合でも、立民とその他の野党が競合する選挙区も67選挙区ある。

維新はかねて選挙協力に慎重な姿勢を崩していない。これに加え、立民は共産や国民民主とも協力体制を構築できていない。

立民が思うように一騎打ちの構図を作れていない一因は共産党が擁立を加速している事情がある。野田氏は党としてかねて訴えてきた安全保障関連法の「違憲部分の廃止」に慎重な構えをみせた。

即時廃止を求める共産党はこれに反発を強めた。田村智子委員長は立民との候補者調整を「地域ごとの限定的なもの」に抑えると強調し、小選挙区で200人以上を立てる方針だ。

とりわけ野田氏が立民代表に就いて以降、対決姿勢を鮮明にした。小川淳也幹事長(香川1区)に対抗馬を立て、野田氏の地元の千葉県ではすべての小選挙区に候補者を立てた。擁立取り下げも否定する。

野田氏は自民党で不記載があった議員が立候補する選挙区に絞った選挙協力も提案してきた。50人近くいるこうした議員の選挙区でみると、一騎打ちは7つにとどまっている。立民と維新は9選挙区で競合し、野党乱立は13にのぼった。

石破茂首相(自民党総裁)は不記載議員らのうち12人を非公認にした。不出馬を決めた越智隆雄氏を除くと、野党乱立の構図が6つと過半数を占め、立民と維新は3選挙区でぶつかる。一騎打ちの構図はない。

立民が新体制になってから衆院解散までは2週間ほどで、他の野党との調整に時間をかけられていないのも響いている。

立民は21年の衆院選で、共産と政権を獲得した場合の「限定的な閣外からの協力」で合意し、小選挙区で野党候補を一本化する形で協力した。立民の獲得議席は公示前より14少ない96議席にとどまった。小選挙区は9増やしたが、比例代表で23減らした。

日本経済新聞社とテレビ東京は10月1、2両日の緊急世論調査で、次期衆院選で野党がどのように戦うべきかを聞いた。「各党が独自に候補を立てるべきだ」が34%で最も多かった。立民の支持層は「すべての野党が協力」が42%だった。

立民にとって、すみ分けの成功体験に09年衆院選当時の民主、共産両党の例がある。共産党は多くの選挙区で候補者擁立を見送った。相互に推薦などをするわけではなく、結果として票の食い合いを避けた。民主党政権の誕生の後押しになった。

民主党の流れをくむ民進党は17年の「希望の党」騒動で分裂した。今も民主党が源流の政党は立民と国民民主に割れたままだ。維新が関西で強い地盤を保ち、東京などでも勢力拡大を狙う。野党第1党の力が相対的に落ち、調整のハードルは上がっている。

自民党と公明党は小選挙区のすみ分けや比例票の集票などで協力関係を構築している。選挙区調整の不発で野党共倒れのリスクが高まれば、自民党を利する可能性がある。

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