自民党は10日、衆院選の公約を発表した。派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け「国民からの信頼回復に全力を尽くす」として、冒頭の章で政治改革を掲げた。政党から党幹部に支出される政策活動費について「将来的な廃止も念頭に、在り方の検討や透明性の確保に取り組む」と記述。日米地位協定に関しては「あるべき姿を目指す」と記した。

◆明記したのは防災庁と地方創生、早期改憲くらい

 政策活動費は使途の公開義務がないことから「ブラックボックス」と指摘されている。既に公約を発表した野党や公明党は廃止に踏み込む。自民でも9月の総裁選で多くの候補が廃止を主張した。ただ、党内には反対論もあり、慎重な表現にとどまった。  小野寺五典政調会長は記者会見で「改革すべきだという議論はかなりあった」と明かしつつ、廃止時期については「しっかり議論する中で前に進めることが必要」と述べるにとどめた。  外交・安全保障分野では、地位協定改定など石破茂首相(党総裁)が総裁選で掲げた政策がややトーンダウンした形で記載された。「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」の表現を使わず、「地域の安全と安定を確保する取り組みを主導する」と強調した。  一方、首相が強いこだわりを持つ防災庁については「設置に向けた準備を進める」と明記。総裁選で力を入れて訴えた「地方創生」関連でも多くの政策を並べ、「地方創生交付金の倍増を目指し、政府に『新しい地方経済・生活環境創生本部』を創設する」とした。  エネルギー政策では、2050年カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)の実現に向けて「原子力など脱炭素効果の高い電源を最大限活用」と記載し、「可能な限り原発依存度を低減する」としていた2021年衆院選の公約から一変した。小野寺氏は「二酸化炭素削減のために(原発が)重要という位置づけが、党内でより大きな声になっている」と説明した。  総裁選の候補者間で意見が割れた選択的夫婦別姓制度に関して明確な記述はなく、「氏制度の社会的意義や運用上の課題等を整理しつつ、どのような形がふさわしいかを含め合意形成に努める」と曖昧な書きぶりになった。改憲は「早期に実現する」と明記した。(井上峻輔) 

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