15日公示、27日投開票の衆院選では、公明党が長年議席を維持してきた大阪府と兵庫県の6小選挙区に、日本維新の会が初めて公認候補を擁立する。「常勝関西」と称される公明の牙城だ。特に激戦が見込まれる大阪では、公明が国政で連立する自民党と統一戦線を組んで維新に対抗、府内全域で協力態勢を整えた。維公初の「全面対決」へ、決戦のゴングが鳴った。
大阪で旗揚げし、関西で勢力を広げてきた維新。前回2021年の衆院選では大阪の全19選挙区中、公明が議席を持つ4選挙区を除く15選挙区で候補を擁立し、全勝した。今回は全19選挙区に擁立する。公明との直接対決を避けてきたのは、旗印の「大阪都構想」で協力を得る必要があったためだ。
しかし、都構想は2度の住民投票で否決。23年4月の統一地方選挙を経て、両党の関係は一変した。全国政党化を目指す維新は、統一選で掲げた「地方議員を改選前の1・5倍の600人以上にする」との目標をクリア。大阪府議会に加え、悲願だった大阪市議会でも過半数の議席を獲得し、単独での政策実現が可能になった。
こうした勢いを背に、維新の馬場伸幸代表は「公明との関係は一度リセットする」と宣言。党内では、衆院和歌山1区補欠選挙(23年4月)や奈良県知事選(同)での勝利も自信に主戦論が高まり、同年6月には大阪と兵庫の6選挙区への公認候補擁立を表明した。
だがその後、風向きは変わった。維新が誘致を主導した25年大阪・関西万博は、会場建設費や運営費の増額が重なり、批判の矢面に。国会では、政治資金規正法の改正を巡る駆け引きで甘さが露呈し、党内外の反発を招いた。斎藤元彦前兵庫県知事がパワーハラスメントなどの疑惑を文書で告発された問題でも対応が後手に回り、逆風に直面している。
対する公明は今回の衆院選で、全国11の小選挙区に公認候補を擁立する。大阪と兵庫の6選挙区はその要で、当落は党勢に直結しかねない。6選挙区では、小選挙区制が導入された96年は新進党として、その後は公明として、民主党政権が誕生した09年を除き、議席を守り続けてきた。
自民は21年の前回衆院選で公認候補を立てた大阪の15選挙区で維新に全敗、96年以来初めて府内の小選挙区で議席を失った。23年の統一選では維新躍進の陰で多くの地方議員が議場を去り、弱体化した府連は党本部直轄での立て直しを迫られた。その再建途上で、党派閥の政治資金パーティー裏金事件が発覚。府連からも処分者を出した。
瀬戸際に立つ大阪の自公は4日、府連と府本部が合同で「大阪刷新会議」を設立。「保育から大学までの完全無償化」などの共通政策を発表した。自民府連の谷川とむ会長は「国でも自公、大阪でも自公」と結束をアピール。公明府本部の石川博崇代表は、大阪の4選挙区に立つ候補者を「政権与党統一候補だ」と強調した。
9月30日には、大阪市内で合同の政策勉強会を開催。関係者によると、公明参院議員の「断固勝利」の呼び掛けに、参加した自公の国会議員や地方議員ら総勢約100人が「オーッ」と気勢を上げたという。
維新も負けていない。藤田文武幹事長は8日、党本部で記者会見し、大阪の全19選挙区のうち18選挙区で、比例代表との重複立候補を認めない方針を明らかにした。大阪で政策を実現してきた「与党」として、退路を断って有権者に覚悟を示す狙いという。吉村洋文共同代表は9日、報道陣に「野党第1党と与党過半数割れの目標は変わっていない。大阪では小選挙区で負けたら終わり。背水の陣で臨む」とかぶとの緒を締めた。【東久保逸夫、藤河匠、鈴木拓也、長沼辰哉】
東日本の維新と公明対決、構図は
東日本では、小選挙区定数の「10増10減」に伴って公明が自民に先んじて擁立した2選挙区で維新と激突する。
埼玉14区では、公明・石井啓一代表(66)が比例北関東から転出すると決まった5カ月後の2023年8月に、維新が「大変注目度の高い大激戦区」として新人の加来武宜氏(43)を擁立すると発表。共産党新人や国民民主党前職らも絡む。公明前職が国替えした東京29区にも維新は新人をぶつける。立憲民主党や国民の各元職、共産新人も出馬する予定で、激戦が見込まれる。
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