衆院選が15日公示され、27日の投開票まで12日間の舌戦が始まった。自民党派閥の裏金事件の対応に注目が集まる一方、埋もれがちになっている物価高対策や地方の再生、安全保障など、生活の安定や国の行く末を左右する諸課題にどう向き合うのか。各地で発せられた候補者の声に、有権者は耳を傾けた。
九州最大の繁華街・天神で高層ビルへの建て替えを促す福岡市の事業「天神ビッグバン」が進み、ビジネスビルや高級ホテルが次々建設されて街の姿が変わる福岡2区(福岡市中央区など)。新型コロナウイルス禍を経てインバウンド(訪日客)需要も復調し、「アジアの玄関口」としてさらなる経済成長が期待される一方、足もとでは生活への不安を抱く市民は少なくない。
「米は高く、食事は食パン1枚のこともある。年金だけでは苦しい。普通の生活がしたい」。選挙戦が始まり、候補者の演説が響く西鉄福岡(天神)駅近くにいた中央区の浜田勇さん(77)は、先が見えない暮らしを心配する。裏金問題とともに、経済、物価高対策は喫緊の課題として、各候補者も主張の軸に据える。
2021年の前回選挙では10万を超える票を集めながら僅差で敗れ、比例復活した立憲民主党前職、稲富修二氏(54)は「裏金周辺にいた議員は誰一人『おかしい』と言っていない。こういう価値観の集団は一刻も早く倒さないといけない」と自民党の姿勢を批判。「物価高で手取りが減る中、自公による増税を止める唯一の方法は与党の過半数割れだ」と支持を求めた。
5選を目指す自民前職の鬼木誠氏(52)は天神の公園で第一声。裏金問題への言及はわずかにとどめ、石破政権に代わっても前政権から引き続き副防衛相を務める実績などをアピールした。経済対策では「人口の3割が高齢者になる社会を支える仕事はどの政権がやっても苦しい。国民の暮らしを守り抜く役割を担いたい」と訴えた。
共産党新人、松尾律子氏(52)は天神中心部の商業施設前で「中小企業支援とセットで最低賃金を時給1500円に引き上げ、社会保障の充実を図る」と主張。「全国政党」を目指し九州でのさらなる浸透を狙う日本維新の会新人、本司敬宏氏(39)は「未来世代のための投資で日本を明るくする」と声を張り上げた。
福岡2区では、ほかに参政党新人の黒石裕子氏(32)、無所属新人の沖園理恵氏(50)が立候補を届け出た。【竹林静、森永亨、佐藤緑平、山口響】
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