「自公連立の象徴。統一候補である私に力強いご支援を」。公明党の新代表として埼玉14区に出馬した前職の石井啓一は、今回の選挙戦でこう訴えている。これまで主に比例北関東ブロックで当選を重ねてきたが、今回は小選挙区での初陣。比例で重複立候補せず、背水の陣で臨む。

◆「自民党にもある程度納得いただける候補」

 街頭演説では、石破茂首相との関係を強調する場面も。「石破さんと私、時々ちょっと固いと言われる。2人とも名前に石がついているので…。決意は固く、頭は柔らかく」。今月13日には、応援に駆け付けた石破首相と手を取り合い、蜜月ぶりをアピールした。

候補者の訴えに拍手で応える支援者ら=15日、埼玉県草加市で

 公明が石井を同区に擁立すると発表したのは昨年3月。「党としての本気度を示し、自民党にもある程度納得いただける候補」として、当時幹事長だった石井に白羽の矢が立った。  今回から、県内の選挙区は1増で計16区になった。これまで草加、三郷市などを地盤に自民で当選してきた2人が、それぞれ3区と13区から出馬することになり、新たな区割りとなった14区は、公明から石井が入り込む形となった。

◆「寝耳に水」「公明を応援しろというなら辞める」

 こうした経緯に、地元の自民関係者は強く反発した。「寝耳に水だ。公明を応援しろというなら辞めるという党員もいる」。自民県連は独自候補の擁立を模索。最終的に石井を推薦する党方針を了承したが、今も地元の自民党員には不満がくすぶる。  勝負の焦点は大票田・草加市の票の行方だ。前回衆院選は自民前職が旧3区の同市で5万3000票を獲得した。このうち石井が今回どれだけの票を取れるのかがカギとなる。  石井は地域の課題を探りながら、自民との距離を詰めてきた。その一つが国道4号と県道が交わる草加市内の谷塚仲町交差点の渋滞解消だ。2015年から4年間、国土交通相を務めた石井は、地元の自民県議から相談を受けると現地を視察。国や県と交渉を重ね、将来に道筋を付けた。  この自民県議は「与党幹部の実力者なのに腰が低く、行動するスピードと実現する力は市民のためになる」と話す。石井は自公協力の地ならしに手応えを感じつつあるが、自民の派閥裏金事件で、自公政権全体が逆風下にある。党代表として選挙区に張り付けないジレンマも抱え、「厳しい選挙だ」と危機感を募らせる。

◆「壁を乗り越える」「依存し合う政治を終わらせる」

 対する前回比例復活の国民民主前職の鈴木義弘は11日、三郷市での事務所開きで「組織力、資金力、動員力、何一つとっても私が劣っているが、高い壁を乗り越えるために力を貸してほしい」と強調。日本維新の会新人の加来武宜も15日、東武線・草加駅前での第一声で「自公のしがらみと依存し合う政治を埼玉14区で終わらせることができるかが問われる」などと力を込めた。共産新人の苗村京子らも対決姿勢を強める。  自公協力について、ある陣営は「昔からの自民支持者の一部には公明支援にアレルギーがあり、『小選挙区は白紙で、比例は自民』とする党員もいるようだ。これまでの自公票の単純な足し算にはならない」と付け入る隙をうかがう。(敬称略、大沢令)

 衆院埼玉14区 埼玉県南東部の選挙区。旧14区の八潮、三郷市と旧3区の草加市が区割り変更に伴って統合した。選挙人名簿登録者数は40万1244人(14日現在)で、草加市が最多の約21万人を占める。東武線やつくばエクスプレスなどで東京都内に通う人たちも多く、住宅開発が続く。外環自動車道や常磐道などで車のアクセスも良く、三郷市の大型商業施設は週末、多くの人でにぎわう。

◆埼玉14区 立候補者(届け出順)
加来 武宜 43 維新  新
石井 啓一 66 公明  前⑩
関根 和也 44 無所属 新
鈴木 義弘 61 国民  前③
高橋 易資 68 諸派  新
苗村 京子 65 共産  新 

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