自民党は衆院選公約で、石破茂首相(総裁)がこだわりを持つ日米地位協定について「あるべき姿を目指す」と、前回とまったく同じ記載にとどめた一方で、立憲民主党は「改定を目指す」と踏み込んだ。日本原水爆被害者団体協議会(被団協)のノーベル平和賞受賞決定で注目される核兵器禁止条約については、各党がオブザーバー参加や批准を明記したが、自民と日本維新の会は触れなかった。

◆沖縄・辺野古の新基地建設は3党が「中止」

 首相は地位協定について「改定したいが(党内で)議論を詰める。必ず実現したい」と日本記者クラブ主催の党首討論で述べたが、党公約では方向性も示さなかった。  米軍普天間(ふてんま)飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の移設に伴う名護市辺野古(へのこ)の新基地建設を巡っては、自民が推進。立民と国民民主党は工事を止めて米国と再協議するとの立場で、共産、れいわ新選組、社民の3党は建設中止を求める。  核禁条約への態度では、自民、維新が言及なし。自民は「核兵器のない世界」に向けて取り組むとしただけだった。首相は米国の核兵器を共同運用する「核共有」を検討する考えも示していたが、公約には明記しなかった。

◆核共有をめぐり立憲民主は自民をけん制

 一方、立民は首相をけん制する形で、「非核三原則を堅持し、北大西洋条約機構(NATO)のような核共有は認めない」と公約した。同党の野田佳彦代表は13日のNHK番組で「核共有を許容する石破首相が核廃絶に本気で取り組むのか」と批判している。維新は米国との原子力潜水の共有を訴えた。  自民はこのほか、中国とロシアによる現状変更の試みが顕在化していることで「戦後最も厳しい安全保障環境」になっていると指摘し、防衛力の「抜本的な強化」を明記。他国の領域を攻撃できる敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有や防衛費の大幅増など、岸田政権が2022年に閣議決定した安保3文書に基づく防衛力の強化を維持する方針を示した。  自民が敵基地攻撃能力について「向上させる」と主張しているのに対し、立民は「専守防衛と適合するものでなければならない」と慎重な考えを示した。同党は日米同盟を基軸としつつ、他国を武力で守る集団的自衛権の行使を認める安保関連法の違憲部分の廃止や防衛増税の中止も主張。「専守防衛」に徹する姿勢を示すことで、自民との差別化を図った。(大野暢子) 

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