プルサーマル発電によるプルトニウム利用の計画量が減っている関西電力高浜原発の3号機、4号機=福井県高浜町で2023年11月、本社ヘリから北村隆夫撮影

 27日に投開票を迎える衆院選。福井2区の選挙区内には廃炉中のものも含めて計15基の原発が集中し、うち7基は、東日本大震災後の長期停止から再稼働している。岸田文雄前政権は、原発新増設や運転期間の延長など最大限の活用へとかじを切る政策転換をし、石破茂首相も踏襲する。一方、原発から出る使用済み核燃料の処分は待ったなしの課題だ。2区の立候補者に原子力政策への考え方を尋ねると、5者5様のスタンスが見えてきた。【高橋隆輔、阿部弘賢】

 共産新人の小柳茂臣氏は、「地震大国の日本と原発は共存できない」との理由から「原発ゼロを今すぐ決断せよ」と主張する。元日の能登半島地震を引き合いに、「自治体が練った避難計画も絵に描いた餅で、逃げることなどできなかった」と指摘。東日本大震災後に再稼働した原発7基についても即時停止を訴えており、まずは使用済み核燃料の発生を完全に止めた上で、「現在の科学水準でもっとも安全な処分方法を考える」と話す。

 無所属元職の山本拓氏は推進の立場で、「地元が受け入れられる立地条件を提示することが重要」と考える。原発構内にとどまる使用済み核燃料に対する十分な保管料の支払いや、現実的な脅威を踏まえた安全確保などを訴える。また、新増設や核廃棄物処分施設は「地下」への立地を提唱。特に最終処分については「私自身が過去に作った、離島や無人島を地下数百メートル掘り下げる試案を加速させていただきたい」と訴えた。

 維新元職の斉木武志氏は、経済的に見合うかどうかを判断基準とする。「既存原発を再稼働して投資を回収するのは『あり』。しかし、国民負担で新しい原発を建てるのは違う」と説明。使用済み核燃料を処理して再利用する、国の「核燃料サイクル」については「(再利用しない)直接処分のほうが安い。(青森県に建設中の)再処理工場に見通しがつかないなら、直接処分も含めて(福井県外への)搬出先を確保すべき」と主張する。

 立憲新人の辻英之氏も、「将来的には原発がなるべくない社会を目指す」とするが、性急な転換は否定。「立地地域は、理不尽さや仕方なさなど、難しいものをのみ込んで原発と歩んでいる。地域の実情を全国民に分かってもらうところから取り組みたい」と、議論の土台作りを重視する。また、「廃棄物問題の解決策が具体的にならないうちは、リプレース(建て替え)は考えられない」と、廃棄物問題と新増設をひとまとまりに捉えた。

 無所属前職の高木毅氏は、電力の安定供給に必要な電源だとして、「安全最優先」を前提に、国が掲げている政策を早急に推し進めていく考え。特に、新増設においては「建設から発電までに長いスパンがかかる」として、次世代炉を想定した新しい規制基準作りなどを急ぐよう主張する。また、最終処分場所の選定や核燃料サイクルの推進には、新増設に向けた環境整備としての意味合いもあるとして「対策は国の責務」と強調した。

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