27日投開票の衆院選では、2021年の前回選まで4回連続で50%台と低迷している投票率が上向くかどうか注目されている。投票率が低いと組織票の重みが増すため、業界団体などとの結び付きが強い自民党の議席上積みにつながるとされてきた。だが、自民支持層でも派閥裏金事件に愛想を尽かし、戒めの意味で棄権する人がいるとみられ、低投票率が自民の多数議席獲得に直結しない可能性もあるとの指摘がある。

◆前回2021年、約4600万人が棄権した

衆院選の立候補者の演説に耳を傾ける人たち=20日、市川和宏撮影

 衆院選の投票率(選挙区)は戦後、60%台後半から70%台で推移してきた。小選挙区比例代表並立制が導入された1996年、初めて60%を割り、2014年には戦後最低の52.66%を記録した。岸田政権下の2021年は55.93%と戦後3番目に低く、棄権した有権者は約4600万人に達した。  1選挙区で1人しか当選しない小選挙区制で投票率が低いと、企業や農業団体などの組織票を持ち、創価学会を支持母体とする公明の支援を受ける自民が多くの議席を得るというのがこれまでの傾向だ。  自民の獲得票は過去5回、2500万台半ばから2700万台半ばでほぼ一定。投票率が69.28%まで上昇した2009年衆院選は、当時の民主党が無党派層の追い風を受け、自民は小選挙区で64議席しか獲得できなかった。一方、55.93%の2021年は187議席を得た。  全有権者に占める得票割合の「絶対得票率」も、自民は2021年で約26%にとどまったが、小選挙区の獲得議席割合は約65%に上り、多くの棄権が自民にプラスに作用した。森喜朗元首相がかつて、「(無党派層は)寝ててくれればいい」と失言したことからも、低投票率は組織票のある政党に有利な実態が浮かび上がる。

◆スキャンダルで自民支持者の棄権が増える恐れ

 公益財団法人「明るい選挙推進協会」が2021年の衆院選後の調査で棄権の理由を聞いたところ、トップは「選挙にあまり関心がなかった」で30.2%。「適当な候補者も政党もなかった」が23.9%で続いた。  投票率低迷の背景について、明治大の井田正道教授(政治学)は「1強多弱の政治状況が理由だ。自民に代わる受け皿としての野党第1党の期待度の高さが影響する」と分析。ただ、田中角栄元首相のロッキード事件有罪判決を受けた1983年衆院選や、今年4月の衆院3補欠選挙を例に挙げ「金銭スキャンダルで自民支持者が棄権し、低投票率が必ずしも自民に有利に働かない可能性がある」と話した。(川田篤志) 

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