◆実態解明をさせないため? 改ざん、廃棄、「作成しない」
岸田政権では、保険証機能をマイナンバーカードに持たせる「マイナ保険証」の普及を図る中で、現行の健康保険証廃止を決定した経緯が公文書に残されていないことが東京新聞の取材で判明した。過去にも、森友学園への国有地売却を巡る決裁文書の改ざんが発覚。安倍晋三首相(当時)主催の「桜を見る会」の問題では、招待者名簿の廃棄が実態解明の壁となった。 公文書管理法では、公文書は「職員が職務上作成・取得し、組織的に用いる」文書と定義される。だが、過去の政権では「組織的」の定義を狭く解釈し、政権幹部や一部の職員で議論したとして政策決定過程が分かる公文書を作成しなかったり、文書を作成しても「メモ」扱いにとどめたりする事例が続いた。保存期間も「1年未満」に設定できる基準があいまいで、国民への情報公開を阻害し続けてきた。◆石破首相は過去に「公文書の書き換えは冒瀆」と主張してきたが
自民党総裁の石破茂首相は2018年3月のブログで、森友学園の決裁文書改ざんに関して「公文書は国民のものであり、官僚が勝手に書き換えることは法の趣旨を冒瀆(ぼうとく)する」と指摘。真相解明についても「主権者の代表として責任を負っている」と主張していた。だが、首相のもとで作成された自民の衆院選公約には、公文書管理の問題への対応について記載がない。 立憲民主党は公約で、公文書管理制度の抜本強化や新たな行政機関の設置などを主張。日本維新の会も行政機関新設などを求める。公明党は改ざん防止などに取り組むとする。共産党は、省庁職員が職務で作成した文書を全て公文書として扱うよう法改正を訴える。国民民主党は、監視機能の強化を掲げる。 内閣府の公文書管理委員会で委員長代理を務めた三宅弘弁護士は、公文書に関する過去の政権の対応について「意見集約をできる限り国民に知らせない方向で整理し、行政を運営してきた」と説明。衆院選では「公文書の定義の問題や作成・保存の在り方など、適正管理に関する議論をしなければならない」と求める。公文書管理法 年金記録の紛失や薬害肝炎の症例リスト放置など、政府のずさんな文書管理が相次いで表面化したのを受け、2009年に成立、11年に施行された。公文書管理と保存体制の強化が目的とされた。公文書を「国民共有の知的資源」と定義し、政策決定の過程を検証できる形での作成を求める一方、廃棄には首相の同意が必要とした。
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