晴れた日には富士山が屋根のように見える「富士山ローソン」=令和5年3月、山梨県富士河口湖町(平尾孝撮影)

コンビニエンスストア越しに富士山が見え、富士山がコンビニの屋根のように見えるため「富士山ローソン」として外国人観光客に評判の絶景スポットで、撮影できないように目隠し幕が張られることになった。ごみのポイ捨てや私有地に勝手に入り込むなどのマナー違反に耐えかねた住民の要望を受け、富士河口湖町が苦肉の策として決めた。

富士山ローソンは、タイの人気俳優がSNSで紹介したことから、2年ほど前からアジアからを中心とした外国人観光客の人気撮影スポットとなっている。富士急行線の河口湖駅からも近く、周囲には常時数十人が撮影している。

コンビニの駐車場やその前の歩道でも撮影しているが、コンビニの反対側にある歯科医院前の歩道からのほうがアングルがいいと人気があり、撮影者が殺到し、幅約70センチの歩道をほぼ占有している状況だ。

さらに、喫煙やごみのポイ捨て、通院者向けの駐車場への無断駐車などが相次いだ。町では警備員を配置し、交通ルールを守るよう指導してきたが、マナー違反は続いていた。

反対側の歯科医院前の歩道で「富士山ローソン」を撮影する外国人観光客=26日、山梨県富士河口湖町

歯科医院は足場を組んでの改装工事に入っており、足場に観光客が触れることで、けがや事故につながる懸念があるとして、町に対策を求めた。

町の都市整備課でもさまざまな対策を検討したが、妙案は出ず、「最終手段」(担当者)として、目隠し幕で富士山自体を見えないようにすることを決めた。

歯科医院側の歩道にポールを立て、高さ2・5メートル、幅20メートルの幕を張る。幕越しに富士山が見えないように黒色とする予定だ。30日から工事を始め、早ければ5月1日にも幕を設置する。

歯科医院の井出公一院長は「ピンポイントでうちの前だけがこういった状況になっていて困っていた」と話す。目隠し幕の効果やその後に観光客の殺到がおさまるかどうかは「わからない」と、まだ不安そうだ。

訪日外国人観光客の回復で、全国の観光地でオーバーツーリズム(観光公害)が問題視されている。撮影スポットを人為的になくすといった措置はほぼ前例がない中で、今回の富士河口湖町の対策は全国的に注目を集めることになる。

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