国会議事堂=東京都千代田区で、竹内幹撮影

 衆院選で自公連立与党が過半数割れに追い込まれたことを受け、米国や欧州などでは日本政治が不安定になることへの懸念が高まっている。一方、中国メディアは日中関係への影響は「限定的だ」との見方を伝えた。

 「日本が政治の大変動に直面している」。米ブルームバーグ通信は自公政権の敗北をそう報じた。ロイター通信も27日、中国や北朝鮮の軍事的圧力増大を念頭に、選挙は「東アジアの安全保障情勢が緊迫」する中で実施されたと位置付け、日本が「政治的不安定」に陥ることに懸念を示した。

 バイデン政権は同盟国との関係強化を図る上で「制度化」をキーワードにしてきた。日本も例外ではなく、日米双方で政権が代わっても関係の基盤が崩れないようにする思惑があった。そのため、仮に連立政権の枠組みが変化しても、日米関係にすぐに悪影響が出るとは想定されていない。

 ただ、国内の権力基盤が安定しなければ、外交に力を割きにくくなる。中国による台湾やフィリピンへの威圧、北朝鮮とロシアの関係緊密化など東アジアの情勢が緊迫する中、日米同盟の抑止力向上のためにも日本の政権の安定を望むというのが米国の基本的な立場だ。

 一方、中国主要メディアも自公連立政権の大敗を相次いで速報。中国国営中央テレビは28日、東京特派員のリポートとして「政治とカネ」の問題など与党の敗因を伝えたうえで「日本の政局は変数に満ちている」と今後の不透明感を強調した。そうした中で中国紙「環球時報」(電子版)は「衆院選の結果は中日関係にあまり大きな影響を与えないだろう」との国内識者の分析を紹介した。

 米大統領選や国内経済の減速という不確定要素を抱える習近平指導部は対日関係の不安定化は望んでおらず、石破政権の行方を慎重に見守るとみられる。中国外務省の林剣副報道局長は28日の記者会見で「日本の内政であり論評はしない」としつつ、日本側に「建設的で安定した中日関係の構築に力を尽くすよう希望する」と求めた。

 一方、英紙フィナンシャル・タイムズは、石破茂首相の解散戦略が「裏目に出た」と指摘し「裏金スキャンダルに嫌気がさし、生活費高騰に疲弊した有権者に不満をぶちまける場を与えてしまった」と報じた。

 また韓国でも衆院選の結果は関心を集め、東亜日報は「裏金スキャンダルで腐敗の素顔が明らかになった上に、物価高が続いて実質賃金が減り国民の不満が大きくなった」と解説。聯合ニュースは裏金問題の議員の多くが落選したことに言及し「『審判選挙』だったことを如実に示した」と伝えた。中央日報は、「石破首相の責任論や退陣論が浮上する可能性もある」と指摘した。【ワシントン秋山信一、北京・河津啓介、ロンドン篠田航一、ソウル日下部元美】

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