小池氏には改めて「証拠」を示してもらうしかないのでは

衆院3補選(東京15区、島根1区、長崎3区=28日投開票)は終盤戦に突入した。自民党派閥の裏金事件を受けて、選挙の主な争点は「政治とカネ」の問題となっている。報道機関の情勢調査では、いずれも共産党の支援を受けた立憲民主党の候補が優勢だという。

日本を取り巻く安全保障環境が悪化するなか、共産党は今でも綱領に「日米安保廃棄」「自衛隊解消」を堂々と掲げている。立憲民主党は2021年11月の衆院選も今回のように共産党と連携して戦い、議席を減らした。当時の枝野幸男代表は引責辞任している。

情勢調査や世論調査の結果を見る限り、有権者は今回、「立憲共産党」への警戒感よりも、「自民党の金権体質」に憤りを感じている。「自民党にお灸をすえる」という意識が強いようだ。

自民全敗なら岸田首相の再選赤信号

国会では、裏金事件を受けて政治資金規正法改正の議論が始まった。国民は、議員本人を含めた厳罰化などに加え、日本維新の会が訴え続けてきた「調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の使途公開」や、外国勢力の浸透や介入を防ぐための「外国人によるパーティー券購入禁止」などに注目・期待している。ただ、自民党執行部がこれに賛同する様子はなさそうだ。

もし、衆院3補選で、自民党が不戦敗を含めて「3選全敗」となれば、岸田文雄首相が9月の自民党総裁選で再選されることはないだろう。岸田首相は崖っぷちに立たされている。日本のためにも党内の膿を出し切り、本当に痛みを感じる法改正に踏み切るべきだ。

さて、候補者9人が出馬して大乱戦となっている東京15区で、複数の候補者が他陣営による過激な妨害行為を受けて、警視庁に通報・相談する異常事態になっているという。

私もニュースやユーチューブで見たが、「これが日本の選挙なのか」「まさにカオス状態」と感じざるを得なかった。同選挙区には女性候補も多いが、妨害行為に恐怖を感じているはずだ。

選挙は政策や主張を有権者に訴えて、当選を目指して正々堂々と戦うものだ。ある陣営の行為はそうは見えない。これを放置すれば、有権者の選択の機会が奪われる。警視庁には、法律にのっとり、厳正に対処してほしいと思う。

「側近中の側近」が批判の急先鋒の事実

さて、小池百合子都知事の「学歴詐称疑惑」が、再びクローズアップされている。元側近で弁護士の小島敏郎氏が月刊「文藝春秋」5月号に「学歴詐称工作に加担した」と告発する手記を発表した。

これに対し、小池氏は記者会見などで、「大学が卒業を認めている」「卒業証書と卒業証明書もお伝え(公開)している」と疑惑を否定している。ただ、小島氏は今年7月の都知事選を見据えて、刑事告発の姿勢を示唆している。都民は疑念を深めるばかりではないか。

小池氏は改めて、大学側から最新の「卒業証明書」を出してもらうなど、小島氏や都民を納得させる「証拠」を示すしかない。

小島氏は、小池氏が環境相時代に「クールビズ」をともに推進し、小池氏が都知事就任後は、特別顧問や都民ファーストの会政務調査会事務総長を務めた。私は「側近中の側近」「懐刀」といえる小島氏が、「小池氏批判の急先鋒(せんぽう)」となった事実に大いに注目している。(前大阪府知事、前大阪市長 松井一郎)

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