11月11日にも実施される特別国会での「首相指名選挙」を巡り、与野党の攻防が激化している。立憲民主党の野田佳彦代表は30日、日本維新の会の馬場伸幸代表、共産党の田村智子委員長と個別に会談し、野田氏が上位2人による決選投票に残った場合の協力を依頼した。共産は前向きに検討する姿勢を示したが、維新は消極的な態度を示し、政権交代に向けた立憲の多数派工作は難航している。
国民民主党は決選投票も含めて玉木雄一郎代表に投票する方針を確認した。自民党の森山裕幹事長は31日、政策ごとに連携する「部分連合」を視野に国民民主の榛葉賀津也幹事長と会談する。
野田氏は30日、国会内で馬場氏と会談し、決選投票での協力を要請したが、馬場氏は「野田氏の名前を書くにしても大義や具体的な改革案がないならくみすることはない」と距離を置いた。馬場氏は会談後、記者団に、今後も両党間で協議を続ける方針を示した。
野田氏はその後、田村氏とも会談し、協力を依頼。田村氏は立憲側が企業・団体献金の禁止を含む政治改革を確約すれば野田氏への投票を「前向きに検討したい」と応じた。
政権交代を掲げる立憲だが、仮に「野田政権」が誕生した場合でも、参院は自公が過半数を持っており、「ねじれ」が生じる。立憲の源流である旧民主党政権でも2010年参院選での大敗以降、ねじれ国会に苦しんだ経験があり、党内には「今回、政権はとらない方がいい。参院で過半数を持たないとどうにもならない」との声も上がっている。
一方、国民民主は30日、オンラインで執行役員会を開き、決選投票になった場合でも、玉木氏の名前を書く方針を確認した。玉木氏が説明し、異論は出なかった。今後、両院議員総会に諮り、正式決定する。
首相指名選挙は、有効投票の過半数を得た議員が首相に指名されるが、1回目の投票で過半数を得た議員がいない場合は、上位2人の決選投票となる。今回は石破茂首相(自民総裁)と、野田氏の決選投票になるとみられており、多数を得た方が選出される。国民民主が決選投票で玉木氏に投じれば「無効票」となり、他の野党が野田氏でまとまっても、石破氏には届かない計算となる。
自民は石破首相の続投と、「少数与党」での政権運営に向けた動きを活発化させている。自民、国民民主両党は、31日に両党の幹事長と国対委員長が国会内で会談することで合意した。自民は11月中にも取りまとめる総合経済対策について、協議を呼びかける見通し。玉木氏は記者団に、手取りを増やす経済政策や、年収が103万円を超えると所得税が課される「103万円の壁」の見直しへの意欲を改めて示し、「政策実現につながる協議になることを期待している」と述べた。
自民幹部は30日、派閥裏金事件を受け、党を離党した世耕弘成前参院幹事長や、衆院選に非公認で出馬して当選した西村康稔元経済産業相、萩生田光一元政調会長、平沢勝栄元復興相の4人に、与党系無所属の三反園訓氏と広瀬建氏の2人を加えた計6人が自民会派入りすることになったと明らかにした。無所属議員でつくる衆院会派「有志の会」(4人)にも連携を働きかけている模様だ。【田中裕之、池田直、遠藤修平】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。