日米比首脳会談に臨むフィリピンのマルコス大統領(左から2人目)=11日、ワシントンのホワイトハウス(ロイター)

【ローリー(米ノースカロライナ州)=永原慎吾】岸田文雄首相が米ワシントンで11日午後(日本時間12日午前)に史上初の日米比首脳会談に臨んだ狙いは、フィリピンを日米側に引き寄せ、対中包囲網を強化するためだ。日米比は安全保障面での連携は進めてきたが、新たに重要鉱物のサプライチェーン(供給網)の強化など経済の結びつきを強めることで政権交代や情勢変化に左右されにくい恒久的な枠組みを目指す。

「3カ国の枠組みをこれからも大事にしていきたいという思いについては一致できた」

首相は会談後、ワシントンから移動したノースカロライナ州の州都ローリーで記者団にこう成果を語った。

日米比首脳会談に臨む岸田文雄首相(右から2人目)=11日、ワシントンのホワイトハウス(ロイター)

首脳会談で取りまとめた共同声明には、南シナ海で比船との衝突を繰り返す中国の行動に対し、「深刻な懸念」「危険で不安定化をもたらす行為」など厳しい言葉が並んだ。官邸幹部は「中国に弱みを見せないためだ」と話す。

フィリピンはドゥテルテ元大統領時代に「親中反米」の立場を示してきた。だが、2022年に就任したマルコス大統領は中国の振る舞いに反発し、日米との連携強化にかじを切った。昨年11月の訪比では、日本が同志国軍を支援する「政府安全保障能力強化支援(OSA)」を適用した沿岸監視レーダーの無償供与を表明するなどフィリピンの海洋監視能力の向上を支援してきた。

また、今回の3カ国首脳会談では、日米によるフィリピンでの小型原子炉の実用化に向けた協力や、首都・マニラがあるルソン島のインフラ投資の促進に向けた「ルソン経済回廊」の立ち上げなど経済面での連携でも合意した。

外務省内には当初、フィリピンとの関係の強化は、東南アジア諸国連合(ASEAN)内の分断工作と受け止められるのではないかとの懸念もあった。だが、政府高官は「ASEANの一体性を尊重するのは言うまでもないが、力による現状変更には毅然と対抗しなければならないということだ」と強調する。

政府は日米比首脳会談の定例化も目指す。首相は11日に「今は何も決まっていない」と述べるにとどめたが、首相周辺は「1回で終わっては意味がない。この話は定例化することに意味がある」と説明する。

弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮は日米韓、中国には日米比などの枠組みで重層的に対処していくという首相の戦略外交の形が見え始めた。

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