自治体に対する国の指示権を拡大する地方自治法改正案が14日、衆院総務委員会で審議入りした。国会による関与がないまま、政府が閣議決定だけで指示権を行使できる仕組みとなっており、野党からは「乱用も可能で国会が軽視されている」などと問題視する指摘が相次いだ。

◆「指示権は個別法で」「国会の関与を」

 立憲民主党の藤岡隆雄氏は、改正案に盛り込まれた国の指示権について「国会の事前承認だけではなく、事後報告もされないというのは問題が大きい」と述べ、歯止めとなる規定がない点を批判。国会の関与を明記する法案修正を求めた上で、指示権は地方自治法ではなく、個別法で規定するのが原則だと訴えた。

松本剛明総務相=7日

 日本維新の会の中司宏氏も「指示権発動の手続きをより厳格化するため、何らかの形で国会の関与を規定するべきだ」と強調した。  松本剛明総務相は、改正案提出のきっかけとなった地方制度調査会(首相の諮問機関)の議論で国会の関与により機動性が欠けると指摘されたことを踏まえ、改正案に規定を設けなかったと説明。「悪用や乱用されないよう法制度を組み立てた。限定的な要件、適正な手続きを踏まえて指示などの制度を動かす」と繰り返した。(山口哲人)   ◇  ◇

◆「他に例を見ない権力介入規定」

 自治体に対する国の指示権を拡大する地方自治法改正案を巡り、弁護士や法律研究者らの団体で構成する「改憲問題対策法律家6団体連絡会」と市民団体「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」が14日、国会内で集会を開き、改正案は問題が多いとして廃案を求めた。

地方自治法改正案について話す田中隆弁護士

 田中隆弁護士は指示権行使の対象に関し「法案に書かれている自然災害や感染症は一例であって武力攻撃や内乱なども含まれる」と指摘。「国民の安全に影響が出ていない段階でも発動でき、他に例を見ない大ざっぱな権力介入規定だ」と指示権が乱用されることを懸念した。

◆「住民の命が軽んじられる体制に」

 東京都世田谷区の保坂展人区長はビデオメッセージで、新型コロナ流行時に区で試行錯誤しながら対策を講じてきたと説明。「国の指示がいつも正しいとは限らないのに、法改正で指示待ちの自治体が増え、より住民の命が軽んじられる体制になる可能性がある」と批判した。(山口哲人) 

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