1100戸余りで断水続く 来月下旬に復旧見通しの地域も
2度目の断水で避難生活を送る地区
節水影響で製造の日数減らす豆腐会社
地震と大雨被害を一体的に取り扱う運用開始
亡くなった中学3年生の告別式
能登地方の先月21日の記録的な大雨では土砂崩れなどが相次ぎ、浄水場や水道管なども被害を受けました。輪島市と珠洲市によりますと、復旧に向けた工事が進められているものの大量の土砂を撤去しなければ工事を開始できない場所もあるということです。このため大雨の被害による断水は12日午前の時点で輪島市で761戸、珠洲市で414戸のあわせて1175戸で続いています。市は水道管の修復工事などを進めていて、水道は順次、復旧する見通しだとしています。ただ、工事に時間がかかるため復旧が来月下旬になる見通しの地域もあるということです。ことし1月の地震に続いて大雨の影響で再び断水した地区もあり、長期化による生活への影響が懸念されています。断水が続く地域では輪島市と珠洲市が給水車による給水活動を続けているほか、自衛隊が入浴支援を行っています。
珠洲市の大谷地区では浄水場が大雨による被害を受けたため200戸近くで断水が続き、水道の復旧は来月下旬の見通しとなっています。市によりますとこの地区ではことし1月の地震の被害でも5か月余り断水が続いていて、被災者からはできるだけ早い復旧を求める声が相次いでいます。珠洲市大谷地区は今回の大雨で土砂崩れが相次ぎ、住宅や店舗などの1階の部分まで土砂が流れ込むなど大きな被害を受けました。市によりますと地区にある大谷浄水場は、土砂崩れや川の増水で敷地に大量の土砂が流れ込み川から水をくみ上げるポンプなども被害を受けたため、復旧工事には時間がかかる見込みです。珠洲市によりますと、12日午前の時点で大谷地区では198戸で断水が続いています。復旧は来月下旬の見通しとなっていて断水は今後も1か月以上続くとみられます。
この地区に1人で暮らす地名坊暢子さん(85)は、断水の影響で自宅に住むことができないため避難所となっている学校の体育館で生活しています。地名坊さんはことし1月の地震で自宅が大きな被害を受けたことから併設する納屋を改修して住むことを決め、風呂場などを増設したうえで暮らし始めましたが、今回の大雨で大谷地区が再び断水したため再び避難所で生活せざるを得なくなったということです。避難所では給水タンクの水を使うことができますが、住み慣れない環境のためできるだけ早く自宅に戻りたいと話します。避難所での生活は今後も1か月以上続く見通しで、地名坊さんは「息子が私のために納屋を改修してくれて地震による断水も解消したので安心して生活を送っていたのに再び避難生活に戻って悲しい気持ちです。水道が復旧したらすぐに家に戻りたいです」と話していました。
また、大谷地区の地区会長をつとめる丸山忠次さん(69)は「今回また2か月近く断水すると言われました。あとどれだけ我慢すればいいのでしょうか。大雨のあと地元を離れた人がさらに増えたとも聞いてます。なんとかこの場所で暮らせる環境を整えないと安心して生活を続けられません」と話していました。
輪島市と珠洲市では水道管などの被害で漏水が続き、市は水道の使用量が増えると断水が起きる可能性があるとして節水を呼びかけています。このため水道が復旧した地域にある会社でも節水などのために商品を製造する日数を減らすなど影響が続いています。輪島市町野町の豆腐製造会社「エステフーズ谷内」は、ことし1月の能登半島地震の被害で休業が続き4月に営業を再開しましたが、先月の記録的大雨で断水してしまったため豆腐づくりができなくなりました。会社によりますと断水はおよそ1週間で解消され、水道水に濁りなどがないことを確認したあと今月4日から製造を再開しました。
豆腐づくりは大豆を水にひたしたり豆腐を冷やしたりする時などに多くの水が必要ですが、市が節水を呼びかける中、平日は毎日行ってきた豆腐づくりを1日おきにして使用する水の量もできるだけ減らしているということです。地震などによる被災で会社の従業員が12人から6人に減ったこともあり、豆腐の製造量は大きく減少し、ことしの売り上げは去年の半分程度に落ち込む見通しだということです。
谷内孝行社長は「水道は復旧して会社の営業は再開できましたが、地震と大雨の影響で、被災前と同じように製造を続けることは難しいです」と話しています。
また、能登地方ではことし1月の地震に続き、先月の記録的な大雨で二重に被害を受けた住宅が相次いでいます。このため地元の自治体は、通常は地震と大雨といった災害ごとに認定している被害を一体的に取り扱い「り災証明書」を発行する運用を始めています。石川県によりますと、先月の記録的な大雨で浸水などの被害を受けた住宅は11日の時点で1300棟余りに上っていて、1月の地震に続いて被害を受けたケースが相次いでいます。自治体は住宅の被害を認定するための調査を行っていますが、これまでと同じように地震と大雨を区別して調査すると被害の実態にあわせた認定ができないという指摘が出ていました。このため石川県は、大雨と地震による住宅の被害認定を一体的に取り扱うことを認める通知を今月出し、この通知に沿って輪島市や珠洲市などが公的な支援に必要な「り災証明書」を発行する運用を始めています。県によりますと住宅の半壊以上の被害認定が対象となる県の支援金では、地震で一部損壊の被害を受けた住宅がその後の大雨の被害で半壊以上になっても対象になりませんでしたが、今回の新たな運用では支援金を受け取ることができるようになります。石川県によりますと、こうした運用は全国でも例がないということで「被災者がこれまでより手厚い支援を受けられるよう、市や町が被害認定を行うことができる」としています。
記録的な大雨で亡くなった輪島市の中学3年生、喜三翼音さんの告別式が12日、輪島市内で営まれ、参列した同級生などが突然の死を悼みました。輪島市久手川町の中学3年生、喜三翼音さん(14)は、先月21日の記録的な大雨で安否が分からなくなり先月30日に福井県の沖合で遺体で見つかりました。翼音さんの告別式は12日、輪島市内の寺で営まれ、遺族や同級生など100人以上が参列しました。式では翼音さんが家族と一緒に旅行などにいった時の写真や、好きだったという歌をうたう様子を撮影した動画が紹介されました。そして父親の鷹也さんが「14歳の若さで亡くなりこれ以上の悲しみはない。ただ泣いてばかりいると翼音が心配するのでこれから家族と力を合わせて頑張っていきたい」とあいさつし、参列した人たちが突然の死を悼みました。このあと翼音さんの遺影を持った遺族が車に乗って寺を出発すると、参列した人たちは手を合わせて見送っていました。告別式のあと取材に応じた祖父の誠志さんは「家族や友達思いの世界一、優しい子でした。まだ現実を受け止めることはできないが前を向いて生きていかないといけない」と話していました。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。