26日(日)、今年初めての台風である台風1号がフィリピン付近で発生しました。台風は週の後半にかけて日本の南海上を北東へと進む見込みです。多くの所で台風の直接の影響はない見込みですが、台風が連れてきた湿った空気の影響で、梅雨前線の活動が活発になり、29日(水)にかけて警報級の大雨になるおそれがあります。

 また、線状降水帯の予測情報は当初、28日(火)から新たに府県単位で発表される予定でしたが、この大雨の見通しを受けて急きょ27日(月)から前倒しで運用が始まり、さっそく鹿児島県と宮崎県に予測情報が発表されました。何が新しくなったのかを解説します。(気象予報士・前田智宏)

台風の間接的な影響で梅雨前線が活発化 広範囲で警報級の大雨のおそれ

 台風1号は29日(水)にかけて、発達しながら強い勢力で沖縄の大東島地方に近づくでしょう。大東諸島では大荒れの天気に十分注意が必要です。その後は少しずつ勢力を落としながら日本の南海上を北東へ進む見込みです。本州方面が大荒れの天気になるような心配はなさそうですが、台風は熱帯由来の非常に暖かく湿った空気を連れてきます。その台風周辺の空気が西日本や東日本にも流れ込む影響で、本州付近に停滞する梅雨前線の活動が活発になる見込みです。

27日(月)の夜から29日(水)にかけては、九州から関東にかけての広い範囲で、警報級の大雨になるおそれがあります。また、鹿児島県と宮崎県では線状降水帯が発生して大雨災害発生の危険度が急激に高まるおそれがあります。梅雨入り前ですが、梅雨の末期のような大雨になってもおかしくない状況ですので、土砂災害や低い土地の浸水、河川の増水や氾濫に厳重な警戒が必要です。

線状降水帯予測情報が改善 新たに府県単位での発表が可能に

 この大雨の見通しを受けて、気象庁は急きょ27日(月)から線状降水帯の予測情報の新たな運用を始めました。これまでは、線状降水帯による大雨の可能性がある程度高くなったときに、全国11のブロックに分けた「地方単位」で事前に気象情報を発表して注意・警戒を呼びかけていましたが、これをさらに細かい「府県単位」で発表するようになるというものです。つまり、対象範囲をさらに絞り込んだ発表が可能になるのです。気象庁スーパーコンピュータを用いた予測精度の向上に伴い、情報をより的確に出すことができるよう段階的な改善が行われていて、今回の新たな運用はその一環です(なお、地域が広い北海道と沖縄県では、さらに細かい地方に分けた単位で発表されるほか、鹿児島県では奄美地方を、東京都では伊豆諸島と小笠原諸島を区別して発表されます)。

 近畿地方を例にすると、これまでは「大雨に関する近畿地方気象情報」として、半日ほど前に「近畿地方で」線状降水帯が発生して大雨災害発生の危険度が急激に高まる可能性があると伝えられていたものが、「大阪府と奈良県と和歌山県で」というように、さらに対象の地域を絞ってその危険性が伝えられるようになります。

 予測情報が発表された府県にお住まいの方はより自分ごととして捉え、大雨に備えてください。しかし、線状降水帯がいつ、どこで発生するかを正確に予想することは今なお技術的に困難です。気象庁の分析によると、予測情報を出した府県に実際に線状降水帯が発生する「適中率」は4回に1回程度ですが、逆に予測情報を出していない府県に線状降水帯が発生してしまう「見逃し率」は2回に1回程度と見込んでいます。つまり、線状降水帯の発生は2回に1回は予測できないわけですから、隣の府県に発表された予測情報にも注意を払いましょう。

発表されてもとるべき行動は『大雨への心構え』『早めの避難行動を検討』

 情報が発表される地域の単位が変わったとしても、私たちがとるべき行動は変わりません。もし、この「線状降水帯予測情報」が出された場合は、急激に大雨災害発生の危険度が高まるおそれがあることを認識し、一段と大雨への心構えを高めることが必要になるほか、早めの避難行動を検討するなど、身を守る準備をしなければなりません。特に、過去には多くの人が眠っている真夜中に状況が悪化してしまうということが度々ありましたから、もしこの情報で夜間に線状降水帯発生のおそれがあると伝えられた場合には、明るいうちに安全な場所に身を置くようにすることも重要でしょう。情報を活用し、命を守る行動に役立ててください。

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