文芸評論家で1980年代からの江戸ブームの一翼を担った野口武彦(のぐち・たけひこ)さんが9日、老衰で死去した。86歳だった。神戸大学名誉教授。葬儀は近親者で営んだ。
1937年、東京生まれ。早稲田大在学中、安保闘争にリーダーとして参加。東京大大学院に進み、三島由紀夫や石川淳らを研究した。
68年に神戸大講師になり、阪神間に移住。73年に「谷崎潤一郎論」で亀井勝一郎賞。江戸・近代文学の研究、批評を深め、80年に「江戸の歴史家」でサントリー学芸賞、86年に「『源氏物語』を江戸から読む」で芸術選奨文部大臣賞、92年に「江戸の兵学思想」で和辻哲郎文化賞と、江戸ブームをリードした。
95年の阪神・淡路大震災を兵庫県芦屋市の自宅で経験し、97年に「安政江戸地震 災害と政治権力」を刊行した。2002年に退官して執筆に専念。膨大な史料研究に裏打ちされた史実とフィクションを織り交ぜて混乱の時代を描く手法を獲得した。
03年、「幕末気分」で読売文学賞。「花の忠臣蔵」(15年)は翻訳され、中国で約2万部のヒットとなった。朝日新聞の書評委員も務めた。
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