J・K・ローリング、ダニエル・ラドクリフ、エマ・ワトソン(2002年11月) REUTERS

<トランスジェンダーの権利をめぐり、批判派のJ・K・ローリングが擁護派のダニエル・ラドクリフとエマ・ワトソンに言及>

『ハリー・ポッター』シリーズの作者J・K・ローリングは4月11日、ソーシャルメディアへの一連の投稿で、俳優のダニエル・ラドクリフやエマ・ワトソンと対立する意見を表明した。同作の映画シリーズでメインキャストを務めたラドクリフとワトソンだが、特にトランスジェンダーの権利に関する問題について、ローリングと対立する構図となっている。

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英国民保健サービス(NHS)は4月9日、トランスジェンダーに関する医療サービスを未成年者に対して提供すべきかについて、慎重な姿勢をとるレビューを発表した。これを受け、58歳のローリングは4月10日にX(旧ツイッター)でこのレビューを共有し、「未成年者の性転換に関する医学的エビデンスとしては、これまでになく確固たる内容だ」と述べた(このレビューのソース元は、表示可能なユーザーを制限している)。

ローリングの投稿を読んだ、Xのあるフォロワーは、ラドクリフとワトソンがローリングに謝罪し、許しを請うのではないかとコメントした。「ダニエルとエマがあなたに対して、公に謝罪するのを待っています」「あなたはきっと2人を許してくれると思っています」

しかし、ローリングはすぐさま、「残念ながら、そうとは限りません」と一蹴し、これまで未成年のトランスジェンダーを支持してきたセレブたちを批判した。そして、彼らの謝罪は自分よりむしろ、トラウマを抱えたディトランス(性転換を中断したか、元の性別に戻った人)や、単一性別(女性専用)空間がなければ困る弱い立場の女性たちに向けられるべきだと訴えた。

トランスジェンダー問題をめぐって割れた意見

こうしたやりとりは、ローリングがトランスジェンダー問題に対する見方を表明したことで巻き起こり、現在も続いている議論を受けたものだ。ローリングのトランスジェンダーに対する姿勢に関して、ローリングの読者や「ハリー・ポッター」のキャストたちのあいだでは、意見が大きく割れてしまった。

ラドクリフとワトソンは、未成年の医療的な性転換措置を巡る問題について直接考えを述べた訳ではないものの、過去には、トランスジェンダーの権利への支持を公言してきた。ワトソンは2020年6月、Xに声明を投稿し、支持を明確にしている。

「トランスの人々は、彼らが自認している人間であり、そう自認する自分自身について、絶えず疑問を投げかけられたり、否定されたりせずに生きていく権利がある」とワトソンは述べた。「私をフォローしているトランスの人々にわかってもらいたいことがある。私や、世界中の多くの人たちは、みなさんを受け入れ、尊重し、あなたという人を愛している」

ラドクリフも2020年6月に、LGBTQの自殺予防活動に取り組む非営利組織トレバー・プロジェクトに、短いエッセイを寄稿。トランス女性に対する支持を明確に打ち出しつつ、自身の立場はローリングとの個人的に対立している訳ではないと明言した。

「私とローリングが争っているように見せたがっている」

このときラドクリフは、「私自身とJ・K・ローリングが真っ向から言い争っているように見せかけたいメディアが一部に存在することはわかっている。しかし、これはそういうことではなく、いま重視すべきことでもない」と述べていた。

なおスコットランドでは今年、新たなヘイトクライム(憎悪犯罪)法が施行され、それによってローリングが法的処罰を受けるのではないかという憶測が飛び交っている。新法の下では、個人に対するミスジェンダリング(相手が自認するジェンダーと異なる性で呼ぶこと)は犯罪となる。

ローリングはこの件についても、Xへの一連の投稿というかたちで反応した。「ヘイトクライム法を可決したスコットランドの議員たちは、本物の女性や少女がもつ権利と自由よりも、自分の考える女性らしさを演じる男性の感情を、より重く見ているようだ(そうした男性は、実際には女性嫌いであったり、ご都合主義であったりするわけだが)」

警察は、ローリングのコメントについて苦情が寄せられたものの、「こうしたコメントは犯罪とはみなされない。それ以上の措置がとられることはない」と述べたと、AP通信は報じている。
(翻訳:ガリレオ)

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