衆院政治改革特別委で規正法再修正案の説明に臨む自民党の鈴木馨祐氏(前列右端)(3日)

日本維新の会は3日、政治資金規正法の改正をめぐって修正合意したはずの自民党案に反発した。政党から政治家個人に支出する政策活動費の扱いで主張の違いが明らかになったためだ。自民党は維新の主張を受け入れ、政策活動費を「全面公開」する調整に入った。再び法案を修正する。

岸田文雄首相は自民党役員会で規正法改正案について「与党を超えた幅広い合意形成をめざしつつ今国会の成立に向けて全力を挙げる」と述べた。維新の取り込みが念頭にある。

与野党は4日の衆院政治改革特別委員会で法案を採決する日程で合意していた。首相自身が同日の特別委に出席し法改正の狙いを説明する予定だった。自民党内で維新の主張を法案に反映することを優先するため、同日中の質疑と採決を先送りする案が出ている。

自民党は3日、政治資金パーティー券購入者の公開基準額を現行の「20万円超」から2027年1月以降は「5万円超」に引き下げるなどの規正法修正案を提出した。

この修正案をまずは4日に衆院で可決させたうえで、参院で政策活動費の全面公開という維新の主張を受け入れて法案を再修正する手法も取り沙汰されている。この場合は参院で再修正した案を衆院に回付し、再び採決にかけることになる。

首相は5月31日、公明党の山口那津男代表や維新の馬場伸幸代表と相次いで会談し、法案修正で合意した。公明党が主張するパーティー券購入者の公開基準額の「5万円超」を受け入れた。維新とは政策活動費の10年後の領収書公開など3項目で折り合った。

自民党が3日に提出した提出案はこの合意を反映したものだ。

維新との主張の食い違いが表面化したのは法案の細部を巡ってだ。自民党は政策活動費の使途公開対象は1件あたり50万円を超える支出に限定すると維新に伝えた。維新は金額にかかわらず全てを公開対象にするよう求めた。

維新の青柳仁士氏は3日の衆院特別委で「50万円超」に関して「(党首間で)合意した覚えがない」と反論した。音喜多駿政調会長は記者団に「今の自民案に賛成は難しい」と言明した。

いったん党首間で合意したはずの維新が抵抗したのはなぜか。幹部の一人は「合意を急ぎすぎるあまり内容が甘かった」と話す。制度見直しに不備があった場合に世論の批判が維新に向きかねないとの危機感がある。

維新の創設者の一人である橋下徹氏は3日、自身のX(旧ツイッター)で「改革は徹底的に細部にこだわらないといけない」と記した。

自民党は維新に配慮し3日に提出した規正法修正案をさらに見直す方針だ。政策活動費は金額を問わず10年後に使途を公開する調整に入った。

首相は今国会での法改正にこだわる。4日を想定していた衆院通過がずれると法案だけでなく、他の法案の採決日程に影響が生じかねない。

立憲民主党など他の野党は反発を強める。

立民の山岸一生氏は3日の衆院特別委で「自民党、公明党が同じ穴のむじなと批判されて、今回は同じ穴に維新まで入った。むじな3兄弟だ」と批判した。立民は3日の臨時執行役員会で自民修正案に反対する方針を決めた。

共産党の小池晃書記局長も記者会見で「我々の考え方をぶつけ、最後まで反対する」と訴えた。自民党案を「抜け穴づくりをしている。厳しい審判を下さなければいけない」と非難した。

共産党の小池晃書記局長も記者会見で「我々の考え方をぶつけ、最後まで反対する」と訴えた。自民党案を「抜け穴づくりをしている。厳しい審判を下さなければいけない」と非難した。

自民党が3日提出した修正案はパーティー券購入者の公開基準額の「5万円超」への引き下げに加え、政策活動費は支出状況が分かるよう10年後に領収書を公開する。第三者機関による監査のあり方の検討も付則に明記した。立民などが主張した企業・団体献金禁止は盛り込まなかった。

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