非常時に自治体に対する国の指示権を拡大する地方自治法改正案が5日、参院本会議で審議入りした。自治体からの事前の意見聴取は努力義務にとどまるため、現場の実態とは異なる指示が出され、自治体や住民が混乱する恐れがあることなどについて、野党が懸念を示した。

地方自治法改正案が審議入りした参院本会議

 法案には、大規模災害や感染症のまん延のほか、「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」に国が自治体に必要な措置を指示できる内容が盛り込まれている。国の指示に際して自治体との事前の調整は「自治体から資料や意見の提出を求めることができる」としたものの、義務化はされていない。  立憲民主党の岸真紀子氏は本会議で「国の指示がなくても自治体は自主的に対応できる」と指摘。「万が一、指示権を発動する場合は自治体との事前協議を絶対条件とすべきだ」と法案修正を求めた。松本剛明総務相は「事態は多様かつ複雑で、特定の手続きを必ず取るような制度化は難しい」と応じなかった。

参院本会議で地方自治法改正案の趣旨説明をする松本総務相

 岸氏は、指示権を行使する事態が明確に規定されていないことについて「武力攻撃事態や存立危機事態で指示権を発動することが、法律上可能となるのではないか」とただした。松本氏は「特定の事態を除外しているものではない」と幅広い適用を認める一方で、「事態対処法制に必要な規定が設けられているため、同法制に基づき対応する」と説明した。(三輪喜人) 

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