5日に衆議院の特別委員会に出席した岸田総理大臣。政治資金規正法の自民党の改正案によって、政治と金の問題、政治資金は“透明”になるんだと説明していますが、野党からは、この法案では“ブラックボックス”で覆われた部分がまだあるとの指摘が相次ぎました。
■政活費公開でも 黒塗り?
5日の政治改革特別委員会で焦点となったのは、政党から議員個人に支出される『政策活動費』の公開の在り方です。
当初の自民案では、50万円を超える支出を対象に、項目ごとに公開するとしていましたが、日本維新の会とのトップ会談とその後の再修正を経て、10年後に全ての支出を対象として公開することも盛り込みました。
ただ、どのような形で公開するのか、具体的な方法について、条文では「早期に検討が加えられ、結論を得るものとする」としています。論戦では、ブラックボックスが残るという指摘が相次ぎました。
国民民主党 長友慎治衆院議員
「黒塗りで出されるということだって今まで何度も経験してるわけですよね。10年後の公開は本当に行われるのでしょうか」
岸田文雄総理大臣
「具体的な領収書等の取り扱いルールについては、これから詳細を詰め、合意をしていくことになる」
“黒塗り”の可能性を否定しませんでした。
有志の会 福島伸享衆院議員
「政策活動費って一体何なのかよく分からないんですね。まさか地方議員に裏金配ったりとか、支援者を飲ませ食わせとかしてないですよね」
岸田文雄総理大臣
「政治政策活動費(の公開)については、個人のプライバシーとか企業の企業秘密とか、そういった点にも配慮しなければならない」
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■監査や罰則「成立後に検討」■監査や罰則「成立後に検討」
罰則などについても“法案が成立してから検討する”と繰り返しました。
国民民主党 長友慎治衆院議員
「10年後に不正が発覚したとして、政治資金規正法の時効5年です。所得税法も時効になります。誰も罰せられないとなるんじゃないでしょうか」
岸田文雄総理大臣
「具体的なルールについて、法案が成立したあかつきには罰則の要否等も含めて、各党各会派で検討が行われると認識をしております」
先送りにされたものは、他にもあります。政策活動費の透明化を監査するための“独立機関の設置”についてです。
立憲民主党 岡田克也幹事長
「独立機関の設置、政策活動費の監査のあり方については“検討を加えて、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられる”と時期の明示がない。ずるずるずるずるいって結局できない可能性がある」
岸田文雄総理大臣
「政治の自由や透明性との関係において、どのような機関をつくるかなど、これは簡単な議論ではありません」
有志の会 福島伸享衆院議員
「夏休み返上でもと言っているんですが、やっぱりここが一番の肝ですから、いつまでもだらだらやるんじゃなくて、今すぐにでも第三者機関の設置の検討を始めるべきだと思いますけど、いかがでしょうか」
岸田文雄総理大臣
「先ほど申し上げた、法律成立後の段取りを進めることになります」
具体的な時期については明言しませんでした。そして、野党が共同で求めてきた企業・団体献金の禁止については一言も盛り込まれていません。
共産党 塩川鉄也衆院議員
「今回の法案には企業・団体献金の禁止は全く入っておりません。総理は特定企業からの寄付が政策決定に影響を与えることはないと。特定の企業・団体からお金を受け取って、政治がゆがめられたことがなかったと言い切れるんですか」
岸田文雄総理大臣
「政治団体の収入については、多様な考え方の多くの出し手による様々な収入を確保することが、政策立案における中立公正やバランスの確保において重要である。政策がゆがめられる、こういったことはないと」
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■衆院通過へ“実効性”は■衆院通過へ“実効性”は
法案は、与党に加えて、日本維新の会が賛成して可決。6日に本会議でも可決され、参議院へ送られる見通しです。
与野党協議にあたってきた実務者は…。
法案提出者 自民党 鈴木馨祐衆院議員
「(Q.再々修正で実効性のあるものになったか)様々な観点からのバランスを満たすような成果を得ることができたと思います」
賛成にまわった日本維新の会は…。
日本維新の会 藤田文武幹事長
「先方から最終的には“丸のみしたい”という形で合意に踏み込んだことについては、私は総理の覚悟を一定評価したい。最終的には我々が言う抜け穴というのはすべて塞げた」
これに対し、立憲民主党は…。
立憲民主党 安住淳国対委員長
「まったく我々から見れば納得できるものではないし、むしろ自民党と維新で修正案を出したけど、10年間開示しなくていいというのは、むしろ自民党にとっては助け舟になったんじゃないかと思うので、その点残念。だから維新らしい」
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■政治改革の成果は?■政治改革の成果は?
政治部官邸キャップ、千々岩森生記者に聞きます。
(Q.政治改革の論議を取材していて、成果と限界をどうみますか)
千々岩森生記者
「今回の自民党案を見てみると、政策活動費の公開は“10年後”。しかも“黒塗り”で出てくる疑いもあります。さらに、そもそも公開のルールはこれから検討しますと。これまでの永田町の常として『ルールは法案が通ってから検討します』という場合“喉元過ぎれば”じゃないですが、その後ちゃんと厳しいルールが整備される期待は持たない方がいいです」
千々岩森生記者
「一方で、反対に回っている立憲民主党も、パーティーを禁止すると言いながら続けるのかと。まさに本音の部分を国民から疑われたと。国会全体が終盤になるにつれて、政治改革の本質的な議論よりは、党利党略の色彩を濃くしていった感じを受けています」
(Q.自民党安倍派の政治資金パーティー問題が明るみに出てから、ずっと議論が続いています。岸田総理は政治的な体力が削がれているような印象を受けますが、どうですか)
千々岩森生記者
「それは間違いないです。去年末からずっと続いています。これから先を見てみると、岸田総理は今国会での解散はせず、9月の自民党総裁選で再選を目指していくという方向です。ですが、なかなか厳しくなっています。総裁選のポイントは2つあります。1つ目は、派閥が解消されたことで、ボスの統制が効きにくくなること。議員票が世論の声の影響をより受けやすくなります。2つ目は、今回の総裁選は、いわゆる“フルスペック”で、党員や地方議員の声も反映されます。当然、こちらも世論の影響を受けやすい。じゃあ誰が有利かというと、簡単に言えば『人気のある人』『選挙の顔になる人』になります」
(Q.支持率の低空飛行が続いている岸田総理は“選挙の顔”になりますか)
千々岩森生記者
「『岸田総理では次の選挙は戦えない』という声は、衆議院の補選にも負けましたし、高まっています。政治資金規正法案は、まだ参院での審議も残っていますが、永田町は、岸田総理が再選できるのか、9月に新しい総理が誕生するのか、政局前夜の空気感となっています」
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