日本銀行本店=東京都中央区(本社ヘリから)

マイナス金利政策などを解除し、「普通の金融政策」(日本銀行の植田和男総裁)に戻ったものの、11年に及ぶ大規模金融緩和で保有額が急増した国債や、上場投資信託(ETF)への対応は大きな課題だ。対応を誤れば、国債や株式の市場への影響も懸念される。産経新聞が金融政策に詳しい主要エコノミスト20人に行ったアンケートでは、植田氏が残る任期中に、どういった対応を打つべきかでも意見が分かれた。

日銀の資金循環統計によると、昨年12月末時点の国債(短期を除く)発行残高に占める日銀の保有割合は53・78%。大規模緩和導入前の平成25年3月末の11・55%から大きく膨れあがった。

日銀はマイナス金利解除後も当面は金利急騰(国債価格は下落)を回避するため、解除前と同程度(月6兆円程度)の買い入れを維持する方針。これに対し、SOMPOインスティチュート・プラスの亀田制作氏は将来の財政破綻リスクを考慮すれば「追加利上げに合わせて国債買い入れの減額を着実に進めることが望ましい」と提案する。みずほリサーチ&テクノロジーズの門間一夫氏も「国債の買い入れはなるべく早く縮小した方が良い」と指摘した。

一方で、約37兆円(簿価ベース)を保有するETFは、足元の株高で時価ベースでは大幅な含み益が生じているとされる。急激に売却すれば株価下落につながりかねない。ETFについては、償還期限のある国債と異なり「売らなければ減らないETFの扱いも難題」(明治安田総合研究所の小玉祐一氏)との指摘もある。

他方で「長期にわたって保持していても何ら問題がない」(UBS証券の足立正道氏)との意見も目立つ。植田氏の残る任期4年のうちに、大規模緩和の「遺産」処理の道筋をつけられるかが注目される。(永田岳彦)

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