注目
Q.立候補しないことは、以前から選択肢としてあったのか?
Q.立候補しないことになったのは何が大きいのか?
Q.野党側の受け止めは?
Q.自民党総裁選の構図や顔ぶれはどうなりそうか?
Q.いま挙がった議員の中では誰が有力なんでしょうか?
Q.衆院選への影響は?
Q.今後の政治日程、注目点は?
岸田総理は、14日の記者会見のあと周囲に対し「この1か月半は、先送りできない課題に専念すると決めて、経済も外交もなるべく道筋だけは付けて身をひきたかった。『目の前の課題』と言い続けてきて、もうこのあたりかなという感じがしたので、このタイミングで表明することにした」と話していたということです。来週20日には、総裁選挙の日程が決まることになっていたことも踏まえ、こう解説する関係者もいます。
「広島、長崎の原爆の日の式典が終わり、中央アジアやモンゴルなど、外交日程に区切りがつくこのタイミングしかなかった」
A.岸田総理は、来月の自民党総裁選挙について「自民党が変わることを国民の前にしっかりと示すことが必要だ。最も分かりやすい最初の一歩は私が身をひくことだ」と述べ、立候補しない意向を表明しました。また、総裁選挙のあり方については、「われこそはと積極的に手を挙げて、真剣勝負の議論を戦わせてほしい。大切なことは、国民の共感を得られる政治を実現することだ」と述べました。そして「政策課題の成果は大きなものだと自負している。政治家としての意地を示した上で、これから先を考えた場合、自民党の信頼回復のために身をひかなければならないと決断した」と説明しました。これによって、岸田総理は、新総裁が選出されたあと退陣することになりました。
A.そうですね。関係者に話を聞きますと、実は、通常国会が閉会した6月ごろから、この8月半ばのタイミングで立候補しないことを表明するというのが選択肢として検討されていたということなんです。このころ、岸田総理は周囲に、こう話していたのが、私の印象に残っています。
「引きずり下ろされるような格好悪い状況には追い込まれたくない。引くとしても、『出るんじゃないか』と思われるタイミングで引きたい」
A.なんと言っても、政治とカネをめぐる一連の問題を受けて、自民党への逆風が止まなかったことだと思います。
内閣支持率が20%台に低迷する中、みずからが責任を取って身を引くことで、党の再生に向けた総裁選挙での活発な議論を通じて局面の打開につなげたいという思いがあったんだと思います。岸田総理は、周辺に対して年明けから「政治とカネの問題でトップがいつか責任を取らなければならない」と繰り返していました。ですので、その責任の取り方が総裁選挙に出ないという今回の判断だったということなんだと思います。一方、党内には次のような指摘もあります。
「岸田総理への批判が強まる中、立候補しても勝てないかもしれないという思いもよぎったのではないか」(自民党内)
A.お盆の時期の急な表明ということもあり、大きな衝撃が走りました。岸田総理は14日の午前中に、党幹部らに電話で決断を伝えました。党幹部からは「総理・総裁の判断なのだから重く受け止めないといけない」という声の一方、「トップがけじめをつけるべきだと思っていたので歓迎する」という意見も聞かれました。衆議院議員の任期満了まで、まもなく1年となる中、党内には「岸田総理のままでは選挙を戦えない」という声が根強くありましたので、最終的には、党内のこうした声に抗いきれなかったという面もあったんだと思います。
A.同様に驚きが広がりましたが、自民党が新たな総裁を選ぶことで刷新をアピールすることに警戒感が出ています。立憲民主党の泉代表は、こう指摘しました。
「自民党は生命維持のため、党が危機になると総理・総裁を変えて、心機一転、過去を忘れてもらうという手法を繰り返してきた。そういう手法にいつまでも国民がひっかかってはいけない」
また野党内からは「自民党内の政権のたらい回しでは何も変わらず、自民党政治そのものを終わらせなければならない」という声も出ています。
A.総裁選挙の日程は来週20日に開かれる選挙管理委員会で決まる見通しとなっています。今後、動きが活発化することになりますが、まだ状況は混とんとしています。岸田総理の表明によって、現職の総理・総裁と争う構図はなくなったため、立候補に意欲がある人たちが動きやすくなったとも言えます。そうした中で、党幹部や閣僚を歴任した60代のベテラン議員が意欲を見せているほか、閣僚経験のある40代の議員も候補として名前があがっています。
早速、動きを見せたのは、過去4回、総裁選挙に立候補した経験のある石破元幹事長です。14日、訪問先の台湾で、20人の推薦人が確保できれば立候補する意向を示しました。
A.そのとおりです。これまで党執行部や閣僚の人たちは、岸田政権を支える立場でしたので、明言を避けてきました。このうち、茂木幹事長は、立候補に意欲をにじませ、政策課題の検討を進めています。14日夜は、麻生副総裁と2時間余りにわたって会食していまして、総裁選挙への対応をめぐって意見を交わしたものとみられます。
さらに閣僚の中では、河野デジタル大臣が意欲を示しています。先週、みずからが所属する派閥の会長を務める麻生氏に立候補の意欲を伝えていて、この2人の意向を、麻生氏がどう受け止めるかが1つの焦点になりそうです。
また閣内で言いますと、高市経済安全保障担当大臣も、自らに近い議員らと会合を重ねています。高市氏は、前回の総裁選挙で、安倍元総理の支援を受けて支持を集めました。
衆議院当選5回で環境大臣を務めた小泉進次郎氏や、当選4回で経済安全保障担当大臣を務めた小林鷹之氏の立候補に期待する声も出ています。この2人はいずれも40代です。小泉氏は、前回の総裁選挙で、石破氏と連携して河野氏を支持し、3人の頭文字をもじって「小石河連合」などと言われました。同じ神奈川選出の菅元総理とも近いとされています。ただ、今回は3人とも名前があがっていますので、一致した行動をとれるかどうかは見通せません。党内では、世代交代を求める声も出ていて、中堅・若手の動きが活発化する可能性もあります。また、前回立候補した野田聖子氏の名前もあがるなど今後、立候補に向けた党内の動きが本格化します。
A.まだ、誰と言えるような状況にはありません。党内にはこんな指摘もあるくらいなんです。
「いま名前の挙がる候補は、いずれも決定打に欠ける。立候補に必要な20人の推薦人を誰が集められるのかも不透明だ」
また今回は、自民党のほとんどの派閥が解消されて初めての総裁選挙になります。これまでは、派閥単位で支持する候補を決めるような動きも多かった中、今回はそういった縛りがない中で、議員がみずから誰を支持するか決めることになりますので、党内からは次のような声も聞かれます。
「構図が固まったとしても、結果を予測できるのは、選挙ギリギリになるのではないか」
A.大きいと思います。衆議院議員の任期は、10月で残り1年となりますので、自民党の新たな総裁が、総理大臣として解散の時期を判断する可能性もあるわけです。永田町ではこのような見立ても出ています。
「新たな総裁が選ばれれば、自民党の支持率は回復するだろうから、直後に解散に踏み切るのではないか」
一方で、次のような指摘もあります。
「政治とカネの問題による国民からの不信は大きく、総理をかえただけで回復とはならない」
自民党内では、政治とカネの問題で逆風が続く中、選挙に勝てる総裁を選びたいというのが多くの議員の本音で、「選挙の顔」にふさわしいかどうかも、総裁選挙の大きな焦点となります。
一方、野党第1党の立憲民主党でも、来月、代表選挙が予定されています。岸田総理の表明を受けて、代表選挙も、次の総理大臣が誰になるのか、そして衆議院選挙がいつになるのかをにらみながらの戦いとなることが見込まれます。
A.まず、自民党の総裁選挙は、今月20日に日程が決まります。岸田さんの任期は9月末までですので、党の規定によって、9月20日から29日までのどこかで、新たな総裁が選ばれることになります。一方、立憲民主党の代表選挙は、来月23日に行われることが決まっていますので、この1か月あまりの間は、与野党双方で政局の動きが展開されることになります。そして、秋には臨時国会、11月にはアメリカ大統領選挙、来年になりますと、夏に東京都議会議員選挙と参議院選挙も予定されています。重要な政治日程がめじろ押しの中、政治から目が離せない状況が続きそうです。
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