兵庫県議会調査特別委員会(百条委)で証人尋問に応じ、机をたたく様子を再現する斎藤元彦知事=神戸市中央区で2024年9月6日(代表撮影)

 兵庫県の斎藤元彦知事(46)らによるパワーハラスメントなどの疑惑が文書で内部告発された問題で、県議会(定数86)は19日午後、斎藤氏への不信任決議案を可決した。斎藤氏は10日以内に議会の解散か失職・辞職かの判断を迫られる重大局面を迎えた。

 総務省によると、都道府県知事に対する不信任決議が可決されるのは5件目。過去4件はいずれも知事が失職・辞職しており、議会が解散された例はない。

 県議会は9月定例会の開会日を迎えたこの日、補正予算案を審議し、可決・成立させた。この直後に緊急動議が出され、全5会派と無所属議員4人が一連の問題で県政を混乱させた道義的責任は重いとして、斎藤氏への不信任案を共同提出した。

 一連の問題を巡っては、県西播磨県民局長だった男性(60)が3月、斎藤氏のパワハラを含む多数の疑惑を告発する文書を一部の報道機関や県議に匿名で配布した。

 間もなく県の調査で男性が特定されると、斎藤氏は記者会見で「内容はうそ八百だ」「公務員失格」と激しい言葉で批判し、退職を認めず局長の職も解いた。

 元局長は県の公益通報窓口にも通報したが、県は通報者への不利益な扱いを禁じた公益通報者保護法の対象外と判断。内部調査を進めた結果、県は5月、「知事らを誹謗(ひぼう)中傷した」として元局長を停職3カ月の懲戒処分にした。

 疑惑の真相究明を目指した県議会は6月、51年ぶりに調査特別委員会(百条委)を設置。元局長の証人尋問を予定していたが、元局長は7月、県内の親族宅で亡くなっているのが見つかった。自殺とみられている。

 斎藤氏は告発内容を一貫して否定したが、百条委が県職員を対象に実施したアンケートでは、多数の職員から「知事のパワハラを見聞きした」などとする回答が寄せられた。

 しかし、斎藤氏は百条委に初出頭した8月30日の証人尋問で、「(元局長への処分は)今も適切だと思っている」と証言。9月6日の尋問では県政の混乱について陳謝する一方、「(自身の)道義的責任は何かわからない」と発言した。

 県議会の全ての会派と議員が斎藤氏に対し、辞職を要求する申し入れ書を提出したが、斎藤氏は再三にわたって続投する意向を表明。86人の県議全員が「県民の信頼を損ない、県職員を動揺させ、議会を巻き込み、県政に長期にわたる深刻な停滞と混乱をもたらした政治的責任は免れない」として、斎藤氏に不信任決議を突きつける異例の事態になった。【中尾卓英、山田麻未、井上元宏】

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