国会議員票 約70人「まだ決めていない」
党員票 上位3人が全体の6割程度占める見込み
候補者別の派閥・旧派閥の支持
地方からの声は
自民党総裁選挙は投開票日を4日後に控え、今の仕組みでは過去最多となる9人の候補者による選挙戦が終盤にさしかかっています。今回の総裁選挙は国会議員1人1票の「国会議員票」368票と、全国の党員・党友による投票で配分が決まる「党員票」368票のあわせて736票で争われます。NHKでは国会議員の動向に加え、全国の各放送局を通じて都道府県連などを取材し、情勢を探りました。
これまでのところ国会議員票368のうち、小泉進次郎氏がおよそ50人を固めています。続いて小林鷹之氏と林官房長官がおよそ40人、高市経済安全保障担当大臣と茂木幹事長、石破元幹事長が30人以上を固めています。また上川外務大臣と河野デジタル大臣、加藤元官房長官がおよそ20人を固めています。ただ、およそ70人の議員はまだ決めていないなどとしています。
一方、党員票は石破氏がやや先行し、石破氏を含む上位3人が自身や支援を受ける議員の地元を中心に幅広く支持を集め、全体の6割程度を占める見込みです。この結果、国会議員票と党員票をあわせると小泉氏、石破氏、高市氏の3人が激しく争う混戦となっています。1回目の投票では9人の候補者いずれも過半数を獲得できず決選投票にもつれ込むことが確実な情勢です。各陣営ではまだ態度を決めていない国会議員などに働きかけを続けるなどギリギリまで支持拡大を図る方針で、決選投票を見据えた駆け引きも今後さらに活発になる見通しです。
今回の総裁選挙はほとんどの派閥が解散を決めた中で行われる「派閥なき総裁選挙」とも言われ、議員の投票行動と旧派閥との関係も注目されています。候補者ごとにこれまで支持を固めた議員を派閥や旧派閥別で見てみます。高市経済安全保障担当大臣は旧安倍派の議員を中心に無派閥や旧二階派などからも支持を集めています。小林鷹之氏は旧安倍派、麻生派、自身が所属した旧二階派、無派閥などから支持を集めています。林官房長官が支持を固めた議員の大半は自身が所属した旧岸田派出身です。小泉進次郎氏は半数程度が無派閥で旧安倍派、旧二階派、旧岸田派などからも支持を集めています。上川外務大臣は麻生派、自身が所属した旧岸田派、旧安倍派などから支持を集めています。加藤元官房長官は自身が所属した旧茂木派、旧安倍派、旧二階派などから支持を集めています。河野デジタル大臣が支持を固めた議員の大半は自身が所属する麻生派です。石破元幹事長は無派閥を中心に旧二階派や旧安倍派などからも支持を集めています。茂木幹事長が支持を固めた議員の大半は自身が率いた旧茂木派出身です。
今回の自民党の総裁選挙でNHKは全国の各放送局を通じて、都道府県連などに取材しました。党の信頼回復に向けた総裁選挙のあり方や9人の候補者に期待することなどさまざまな声が聞かれました。政治とカネの問題をめぐっては「自民党への国民の不信感はこれまでにないほど深刻で、強い逆風を感じる」とか「今回の問題で地方議員までも信頼を失っている」といった声が出ています。そして、今回の総裁選挙について「本格的な改革を進められる人が総裁になるべきだ」という意見や「党が本当に変わったと思ってもらうためにも若い人や女性を総裁に選ぶなど刷新感が大切だ」という指摘が出ています。さらに、今の衆議院議員の任期が残り1年あまりとなっていることも踏まえ、衆議院選挙に勝てる総裁を選ばなければならないという意見も相次ぎました。このほか「党内のほとんどの派閥が解散を決め、特定の候補を応援するよう国会議員から求められることが少なくなった」とか「候補が多く、党員に対して特定の人への投票を呼びかけることが難しい」といった声も出ています。
高市経済安全保障担当大臣は「保守的な思想・信条に共鳴している」とか「外交・安全保障政策や総務大臣経験者としての地方活性化策に期待したい」など、国家観や政策を評価する声がありました。一方「保守的な思想ゆえに支持が偏ってしまうおそれがある」とか「前回も立候補しており、あまり刷新感が出ないのではないか」などという意見もありました。小林鷹之氏は「当選4回の40代という若さで党に刷新感が出る」とか「次世代に焦点をあてた政策を掲げている点にひかれる」など、若さや改革推進を強調する姿勢に期待する声がありました。一方「要職を歴任しておらず、全国的な知名度が足りていない」とか「総裁になるには政治経験が不足しているのではないか」などという意見もありました。林官房長官は「多くの閣僚を歴任していて、政策に安定感がある」とか「中国の情勢などに詳しく日中両国の経済面での連携強化も期待できる」などと豊富な政治経験に期待する声がありました。一方「要職を務めてきたが、国民への知名度はまだ足りないのではないか」とか「中国にきぜんとした対応が取れるか心配だ」といった意見もありました。小泉進次郎氏は「40代の若さで刷新感があり、国民の間で人気も高い」とか「災害の被災地に何度も足を運んで復興に取り組んできた」などと「選挙の顔」としての期待や政治家としての取り組みを評価する声がありました。一方「具体的な政策の中身や政治信条が十分明らかになっていない」とか「まだ政治経験が不十分ではないか」などという意見もありました。上川外務大臣は「法務大臣や外務大臣としても成果をあげてきた」とか「女性に寄り添った政策を掲げていて、女性初の総理大臣になってもらいたい」などこれまでの実績や女性初の総理・総裁の実現に期待する声がありました。一方「党3役などは経験しておらず調整力が未知数だ」とか「明確な主張がまだ少なく政治信条がわかりにくい」などという意見もありました。加藤元官房長官は「主要閣僚や党幹部の経験も豊富で、安定した政権運営が期待できる」とか「地方にとっても重要な賃上げや厚生労働行政を進めてほしい」など、これまでの政治経験や政策を評価する声がありました。一方「これまでの内閣でも要職についており、党に刷新感が出ないのではないか」とか「知名度が不足しているのではないか」などという意見もありました。河野デジタル大臣は「デジタル分野などで一貫して改革を進めてきた」とか「外務大臣や防衛大臣を務めた経験がある」などとこれまでの実績などを評価する声がありました。一方「いまの健康保険証を廃止し、マイナンバーカードと一体化させる政策の進め方は評判が良くない」とか「所属する麻生派を抜けるべきだ」などという意見もありました。石破元幹事長は「政治とカネの問題などを含め、自民党の体質を変えられる」とか「安全保障分野に明るいほか、選挙の応援で全国各地をまわっていて、地方創生にも熱心に取り組んできた」などと政治改革や政策に期待する声がありました。一方「かつてほど国民の支持を集められていないのではないか」とか「特定の政策にこだわりすぎる面があるのではないか」などという意見もありました。茂木幹事長は「重要閣僚や党幹部など多くの要職を歴任し、政治経験が豊富だ」とか「物価高が続く中での経済対策や外交手腕に期待したい」などとこれまでの実績や政策を評価する声がありました。一方「要職を務めてきたが知名度が高まっていない」とか「幹事長の立場で関わってきた増税などの方針を転換しようとする姿勢は評価できない」などという意見もありました。
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