自民派閥のパーティー券収入のキックバック計約4800万円を受領しながら政治資金収支報告書に記載しなかったとして逮捕、起訴された前衆院議員、池田佳隆被告(58)が地盤としてきた愛知3区(名古屋市昭和・緑・天白区)。自民は元官僚の新人を擁立し、9期連続当選の立憲民主前職に挑む。日本維新、参政、日本保守の3新人も知名度アップに懸命だ。裏金問題の「震源地」は激しい選挙戦に向けた準備が活発化している。
9日朝、緑区の市営地下鉄徳重駅。改札口へと続くエスカレーターの前で参政新人の内装業、杉本純子氏(47)が通勤客らに会釈を続けた。すぐそばの交差点では日本維新新人のパーソナルトレーナー、皆川雅一氏(43)が「おはようございます」と通勤客にあいさつし、車道に向かって手を振る。日本保守新人の学習塾経営、大橋享氏(59)は緑区の名鉄鳴海駅前など2カ所で演説した後、仕事へと向かった。
昭和区の地下鉄八事駅そばでは、自民新人の元経済産業省課長、水野良彦氏(50)が妻と一緒にかっぱ姿で立ち、「よろしくお願いします」と声をかけ続けた。自民愛知県連の3区候補者公募に応じた20人から選ばれ、9月20日に出馬会見したばかりだ。
「まず一言、おわび申し上げたいと思います。たいへん信頼を毀損(きそん)いたしまして申し訳ございませんでした」。7日に初めての街頭演説に立った水野氏は、冒頭で頭を下げた。
3区を裏金問題の「震源地」と表現する水野氏は、有権者へのおわびを重視している。支える地元市議が「知名度が全然ないのだから、自分のアピールに重きを置いた方がいい」と心配するほどだが、水野氏は言う。「地域の声が国政に届けられていないことに憤りと焦燥の念がある。おわびをしっかり果たした後に、信頼を獲得していかなければならない」
3区は、立憲民主前職の近藤昭一氏(66)が過去3回連続で制しており、自民にとってそもそも厳しい選挙区だ。
長年培った支持基盤と知名度を誇る近藤氏は経済回復、医療強化、環境保護など「六つの柱」を掲げて選挙戦に臨む。立憲民主の「次の内閣」のネクスト環境相にも任命されており、「環境問題は経済問題であり、生存問題。政治家の仕事は命を守ることだ」と原発ゼロ、再生エネルギー100%の脱炭素社会を目指すと訴える。
近藤氏の陣営は、この衆院選を「簡単ではない」とみて、組織の引き締めを図っている。「裏金問題は国民の財布とは直結しないため、関心が薄れつつあるように感じる」からだ。水野氏が東海地方の有名私立高出身であることから、地元有力者が卒業生に多い同窓会などの力も警戒する。
一方、池田被告は事件について説明する機会を設けず、衆院選への態度も明らかにしていない。【荒川基従】
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