石破首相に質問する立憲民主・野田代表(9日、国会内)
9日の党首討論の主なやりとりは次の通り。

【自民党の不記載議員の非公認】

野田佳彦立憲民主党代表 自民党派閥裏金事件に関与した前議員ら12人が衆院選で非公認となった。首相は「相当程度が非公認になる」と述べたが、関与者の公認は30人を超えるのではないか。正確な日本語では「大半が公認」だ。脱税まがいの議員に、政党交付金として血税が支払われるかもしれない。国民感情から到底理解できない。

石破茂首相 「裏金」「脱税」とは決めつけだ。政治資金収支報告書への不記載に関し、脱税容疑で立件された者はいない。不記載については極めて良からぬことで、おわびする。厳正な議論を経て、公認しないと決断した。非公認で選挙を戦うことがどれほどつらいか、百も万も承知している。しかし総理総裁に就任以降、国民の怒りが強いと肌身に感じている。最終的な判断は主権者の国民に任せる。これが甘いとかいいかげんとは一切考えていない。

野田氏 非公認の立候補者が当選した場合、追加公認するか。

首相 主権者である国民の判断があれば、追加公認はあり得る。

馬場伸幸日本維新の会代表 2025年夏の参院選で裏金議員に対し、衆院選と同じ物差しで公認、非公認を決めるのか。

首相 同じ国会議員なので、衆院と参院で違う対応はしない。

【政治資金問題の再調査】

野田氏 首相は新しい事実が出ない限り、裏金事件の再調査を否定した。だが有罪判決を受けた旧安倍派の会計責任者が、2022年4月に中止された還流を幹部協議で再開したと法廷で証言した。裁判所が事実認定した新事実だ。再調査すべきだ。

首相 いろいろな事実関係がある。有権者に対し、いかなる責任を負うべきか党内で議論する必要がある。再調査を全く否定するものではない。厳粛に受け止めなければならない。

野田氏 新しい事実ではないのか。再調査するかしないか聞いている。

首相 綿密に調査してきたが、捜査権を持たないという限界がある。関係書類の有効期限が超過し、確認しようがないものもある。その中で最大限努力し調査してきた。

野田氏 再調査せず、うやむやにして早く解散しようとしている。「裏金隠し解散」だ。

【衆院選】

野田氏 「ご祝儀相場」のうちに解散すれば勝てるだろうと、早期の衆院解散を決めたのか。

首相 国を守り、国民を守り、デフレを脱却するためには、私どもが政権を引き続き担わせていただくことが最も肝要だと考えている。正々堂々、国民の審判を仰ぐのがわれわれの姿勢だ。

馬場氏 国民に何を問う解散なのか。

首相 新内閣が発足した。内閣が取り組もうとしていることに信任を得るのが衆院解散・総選挙の意義だ。

【補正予算】

野田氏 臨時国会を会期延長して予算委員会を開くべきだ。旧安倍派幹部は国会の政治倫理審査会で、裁判所の事実認定と異なることを語った。うそだった可能性が十分高い。予算委で証人喚問すべきだ。

首相 予算委開催は国会が決めることだ。災害が相次いだ石川・能登半島の方々の困窮を一日も早く改善するため、予備費で対応する。24年度補正予算編成は既に指示した。衆院選で国民の判断を得た後、補正予算案を審議し早期成立を期す。国家国民のため切れ目のない予算審議が必要だ。

【政治改革】

野田氏 政治改革の原点に立ち、政治資金規正法の見直しを行う際には、企業・団体献金の禁止からスタートすることが大事だ。

首相 大事なのは政策が左右されないかどうかで、これから先も認めるべきだ。立民内にも企業・団体献金は必要だとの議論がある。透明性が担保されるよう努力していく。

馬場氏 首相就任後、新たに企業・団体献金の申し出があった場合、どう対応するか。

首相 寄付を頂いた企業・団体に有利に取り計らう政治行動をしたことは一切ない。この職を務めている間は、政治資金パーティーを開催するつもりは全くない。

【安全保障】

馬場氏 自民総裁選で唱えていた日米地位協定改定やアジア版NATO(北大西洋条約機構)構想が首相に就任した瞬間、雲散霧消した。国民から疑問を持たれている。

首相 自民は独裁政党ではない。総裁が言えばそのまま政策になるわけではない。これから党内で議論していく。

【政策活動費】

玉木雄一郎国民民主党代表 政治不信を払拭してくれると期待された石破内閣が、新たな政治不信を生み出しつつあるのではないか。今回の衆院選では政策活動費を使わないと明言してほしい。

首相 現在認められており、使うことはある。選挙区で厳しい戦いをしている地域もある。

玉木氏 問題発言だ。何に使い、誰に渡したか分からないお金で選挙に臨めば選挙がゆがむ。

首相 「検討、検討」で終わるのは、結局何もしないのと一緒だとの強い意識を持っている。政策活動費の在り方にきちんと結論を得る。

【旧石破派】

野田氏 旧石破派の政治資金パーティーで裏金問題が指摘された。旧安倍派や旧二階派のように構造的問題ではないか。

首相 構造的な不正ではない。ある団体が複数の議員からパーティー券を購入、合算したら収支報告書への記載が義務付けられた20万円を超えていたというものだ。事務的ミスだが、心からおわびしたい。裏金化して誰かが利益を得たということは一切ない。

野田氏 「複数の議員」に首相は入るか。

首相 入っていない。

【憲法改正】

馬場氏 衆参両院の憲法審査会で改憲論議が進まない。壁を突破するために、首相がスタートボタンを押すべきだ。

首相 自民の党是だ。党総裁として改憲が発議され、国民投票をする日が一日も早く来るよう可能な限り努力する。

【賃上げ・労働改革】

田村智子共産党委員長 最低賃金の大幅引き上げには、中小企業への直接支援が不可欠だ。

首相 全体主義国家ではない。政府が主導し直接お金を払う手法が必ずしも正しいと思わない。

田村氏 労働時間が長過ぎる。ゆとりが欲しいとの切実な声に応え「1日7時間、週35時間」労働制の実現に責任を果たすべきだ。

首相 労働時間はもっと短くなければいけない。長ければ生産性が上がるということは全くない。

田村氏 中小企業支援や残業規制の強化などを検討してほしい。

首相 手法はいろいろある。生産性を向上し、価格転嫁を円滑に行うことで、十分な賃金を支払う。それを可能にする労働時間はもっと短くてもできると思っている。〔共同〕

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