衆院は9日午後の本会議で解散された。政府は第50回衆院選の日程を「15日公示、27日投開票」と臨時閣議で決定した。自民党派閥の裏金事件後初の大型国政選挙となり、政治の信頼回復への取り組みが最大の争点となる。物価高に対応する経済対策、防衛費を大幅に増やす政府方針などの安全保障政策の在り方も問われる。

◆戦後最短の政治決戦へ

衆院が解散され、万歳三唱の声が響く本会議場。左壇上前列右は石破首相(佐藤哲紀撮影)

 1日の首相就任から8日後の衆院解散、26日後の投開票はいずれも戦後最短。解散に先立って行われた石破茂首相(自民党総裁)と4野党党首の党首討論で、立憲民主党の野田佳彦代表は「裏金隠し解散だ」と批判した。  首相は9日夜の記者会見で「日本創生解散だ。日本の社会の在り方を根本から変えていく」と説明。勝敗ラインについては「自民、公明両党で過半数と考えている」と述べた。

◆新たな選挙区割で実施 野党間の候補者一本化は進まず

石破首相(左)と党首討論を行う立憲民主党の野田代表(佐藤哲紀撮影)

 衆院選は2021年10月以来3年ぶり。小選挙区定数「10増10減」などを受けた新区割りで初めて実施される。小選挙区289、比例代表176の計465議席を争う。  立民は裏金事件に関係した自民党議員の選挙区で野党候補の一本化を目指しているが、日本維新の会、共産、国民民主各党などは慎重姿勢を示している。  首相と全閣僚は9日午前に開かれた臨時閣議で衆院解散の閣議決定書に署名。立民など野党4党は衆院に内閣不信任決議案を提出したが、解散に伴い廃案となった。   ◇  ◇

◆就任前後で言行不一致が目立つ石破首相

 【記者解説】新内閣発足から8日後、石破茂首相は戦後最短のタイミングで衆院を解散した。「新内閣発足に伴い、国民の意思を確かめる」ことが解散の大義だという。  首相は「納得と共感」を掲げる。だが、国民に投票の判断材料を示す場としていた予算委員会開催に応じないなど、就任前後で言行不一致が目立つ。こうした首相の姿に国民は納得し、共感しているだろうか。

記者会見する石破首相(佐藤哲紀撮影)

 首相は9日、裏金議員ら12人を非公認とした。「相当数の非公認」と厳しい対応をほのめかしていたが、34人は公認した。安倍政権以降、相次いで問題となった「政治とカネ」に甘い体質を改めることなく、非公認の数は少なくても、厳しい姿勢を示せば国民の批判が和らぐのでは、との思惑が透けて見える。  解散直前の党首討論でも、野党の追及は「政治とカネ」にほぼ集中した。説明責任を果たさないままの解散により、裏金問題は衆院選最大の争点になった。  岸田文雄氏が首相を退いたのは、党の顔を代えた「ご祝儀相場」が残るうちに衆院選を乗り切るためだった。この発想に乗った衆院解散は「納得と共感」とは相いれない。(清水俊介) 

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