自民党は9日、選挙対策本部会議を党本部で開き、派閥裏金事件に関係した前議員、選挙区支部長ら計34人を衆院選で公認すると決めた。非公認は6人を加え12人となった。34人は比例代表への重複立候補は認めない。裏金議員の約7割が公認を得た背景には、説明責任や信頼回復よりも、選挙対策という党利党略を優先させたことがある。

◆「国民感情からは到底理解できない」

 第1次公認として裏金議員ら34人を含む小選挙区265人、比例代表14人の計279人の擁立を発表。新たに非公認となった6人は中根一幸、菅家一郎、小田原潔、細田健一、越智隆雄、今村洋史の各氏。いずれも旧安倍派。首相や党4役も重複立候補しない。

首相官邸に入る石破首相=9日(佐藤哲紀撮影)

 自民党幹部は「泣いて馬謖(ばしょく)を斬る」ほどの決断だと自賛した。だが、立憲民主党の野田佳彦代表は党首討論で「国民感情からは到底理解できない」と批判。党首討論後には「臭い物にふたをしてみそぎにしてしまう。これほど露骨な裏金隠しはない」と強調した。

◆小選挙区での敗北を重ねた議員が狙われた?

 自民党内からも「線引きが分からない」「ぶれすぎだ」との不満が漏れた。石破茂首相は6日、軽い処分だった議員が非公認になる場合として「説明責任が十分果たされず、地元での理解が十分進んでいないと判断される者」を挙げていた。そこに「選挙区状況を吟味した」(森山裕幹事長)との判断材料も加わり、基準が曖昧なまま公認、非公認の線引きが行われた。  党幹部らによると、特に考慮されたのは「当選可能性」。非公認を突き付けられた6人の多くは小選挙区での敗北を重ねていた。細田氏は「地元への説明をしっかりやっておくべきだった」と悔やむ。  首相自身、党内の反発を押しきって非公認や比例重複を認めないことを決めた理由を「どうすればわが党が勝てるかという観点で判断した」と説明した。  さらに、非公認にした候補にも対立候補は立てず、小選挙区で勝ち上がれば追加公認すると、首相は党首討論で明言した。党幹部は「裸一貫で有権者の信頼を受けて戻ってきてほしい」と話す。(井上峻輔)


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