大澤真幸（おおさわ・まさち）氏 1958年、長野県松本市生まれ。東京大大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。専門は理論社会学。千葉大助教授、京都大教授などを歴任。著書に『この世界の問い方 普遍的な正義と資本主義の行方』（朝日新聞出版）など。
◆「権威主義」と「抵抗運動」が同居
―トランプ氏は自身に批判的な政治家やメディアをSNSで中傷するなど対立をあおり、批判も受けながら大統領選で圧勝した。
トランプ氏＝2024年7月、米ウィスコンシン州ミルウォーキーで
「トランプ氏が返り咲けば権威主義的なリーダーに従属するわけだが、支持者は権力へのレジスタンス（抵抗運動）をしているような感覚なのが興味深い」 ―議会襲撃事件で起訴され、不倫口止め事件では有罪評決を受けた人物に、なぜそんな心境を抱くのか。 「国連が『持続可能』を目標にするように、世界の人々は環境でも経済でも、現状が素晴らしいと思えない。米国民にも、現状の社会に生きる根本的な不遇感、不安感がある。そこにトランプ氏が現れた。中国からの輸入品に60％の関税を課すとか、ウクライナの戦いを1日で終わらせるとか、普通に考えれば不可能な主張なのに、沈没しそうなタイタニック号に代わる船がやってきたかのように支持された」◆自分の願望を説明する言説が「真理」
―民主党のハリス副大統領ではダメなのか。 「ハリス氏は実現可能な公約をして誠実そうに見えるが、トランプ氏と比べると、米国人にはチマチマした安全なことしか言っておらず、現状の閉塞（へいそく）感を打破する断固とした選択がないと映った。民主党が掲げる『多様性』は大切だが、現状ではエリートのための政策になってしまっており、押しつけだと感じる人も多い。民主党寄りの論者がトランプ氏を批判するほど、トランプ氏に共感している支持者は、自分が侮辱されたように感じ、トランプ氏支持がかえって高まった」 ―兵庫県知事選と通じるものを感じる。残り 510/1434 文字
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