地方自治体への国の指示権を拡大する地方自治法改正案に反対したり慎重な議論を求めたりする意見書が、少なくとも全国18の地方議会で可決されていることが、国会などへの取材で分かった。

国会議事堂(資料写真)

 意見書は21日時点で、17の県・市町村議会から衆参両院に送付された。東京都三鷹市議会は意見書で、改正案について「地方自治の確立と相いれず、自治体への国の関与は『必要最小限とする』と定めた地方自治法にも反する」と批判。地方自治を制限する法改正は行わないよう要請した。

◆「内容が漠然…国と地方の対等な関係が損なわれる」

 能登半島地震の影響を受ける金沢市議会は、「内容が漠然としたもので適用範囲が広範にわたり、国の地方自治体に対する権限が強化されることは、国と地方の対等な関係が損なわれる」と懸念を示した。  東京都小金井市議会は、岸田文雄首相と松本剛明総務相宛てに意見書を提出した。国に指示権行使を認める「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」の要件が極めて曖昧だと指摘。「地方分権の後退につながる危険性がある」とした上で、「法案の提案を急ぐことなく、広く丁寧な議論を強く求める」と記した。  現行の地方自治法では、自治体に対する包括的な指示権が明記されていない。災害時には災害対策基本法、感染症まん延時には新型コロナ特措法といった個別の法律で、指示権が発動できるケースを限定しているが、改正案で対象が広範囲に及ぶ恐れがある。国会の関与も不要で閣議決定だけで発動できる内容となっているため、首長や有識者らが懸念している。  政府は改正案を3月1日に閣議決定して国会に提出。現在、衆院総務委員会で審議が行われている。(三輪喜人) 

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